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「私と、付き合ってもらえませんか」



帰ろうと校舎の横を歩いていると幼馴染が青春に巻き込まれているところに出くわした。思わずちょっと隠れて見守ってみるも会話ははっきり聞こえるわけではないけど、見る限りではどうやら告った女の子は振られたらしい。あんな可愛い子を振るなんてスガもやりおるの。
ちょっと茶化してやろうと思って女の子が去ってから後ろから忍び足で近づいてみる。


「きゃースガ先輩モテモテー!」

「わっ、何」


驚いて振り向くスガを見て笑っていると、「見てたのか」と呆れの一言。見てましたとも。随分可愛い子に惚れられたもんじゃない。あたしがにやにや見ていると相変わらずの呆れ顔でスガは「俺には勿体無いよ」と言った。
何その勿体無いって。正直さっきあたしはあの子見て見る目あるな、と思ったところなのに。言うタイミングもなくて自分でもなかったことみたいにしてるけどあたしだって実はスガが好きだったりしているわけで。幼馴染な分、自分で考えるのも恥ずかしいのだけど。いつかスガに彼女が出来て幸せになってるとこを見れば諦めもつくだろうと思いながら何年過ごしていることやら。こいつはモテるくせに彼女を作らない。そして大体こう言う、「俺には勿体無い」。さっきの子といお何がどう勿体無いんだか。


「スガさ」

「ん?」


あたしなら勿体無くないだろ。
と、言ってみる。幼馴染のノリ、という定で。スガの動きが一瞬止まってんー、と考えてからクスリと笑って「お前こそ俺には勿体無さすぎだろ」と一言。ああ、なんか凄いノリで告ってノリで振られた。こいつ1日に2人も振りよった。なんか冷静にそんな面白くもないこと思ったりして。
じゃあお前は誰だったら勿体無くないんだよと弱く腕あたりを殴ってやると、眉を下げて空笑いで誰だろうな、と言った。


「でもあれだな」

「何」


お前には幸せになって欲しいからな。なんて、なんでそんなに切なそうに言うのよ。


「お前帰り?一緒に帰んべや」

「お、おう」


何処までいい奴なんだあんたは。そういうとこがモテるんだろうけど、正直 てめぇが幸せにしろよと思ったことは秘密。
結果数年来のもやもやは解決せずで、悔しかったので帰り道にアイスをねだってやった。仕方なさそうに買ってくれるのも知ってて、自分の分を買うとあたしが一口って言うのも知ってて別のものを買う。
食べながら帰り道で何てことない話をしてあたしが一口くれと言うとじゃあ俺にもと結果交換するみたいな女子みたいなことをした(もしくはカップル、と言いたいけど恥ずかしいからやめる)。もし今のをさっきの女の子が見てたら激怒だろうなぁ、役得と言うかなんというか。少し申し訳なさを感じながらアイスを平らげて、分かれ道に差し掛かる。ここからお互い反対方向 一緒に帰るのはここまで。ご馳走さまだけはしっかり言っていつも通りまた明日、となるところで後ろから呼ばれて振り返る。


「何?」

「これ」

「?」

「もしお前が幸せになれなかったら俺が幸せにしてやっから」


俺でよかったらだけどな、で眉下げにっこり。手渡されたアイスの棒には「あたり」の文字。何事もなかったようにまたな、と去っていく彼の後ろ姿を呆然と見ながら、正直こんな小学生みたいなことで喜んでしまっている自分が恥ずかしくなった。










(これは結ばれたということで、いいんだろうか)

























140714
HQはスガが1番好きなんだけどどこまでもいい人になりまくってなんかもう本トいい人だなスガ。素敵。
表現出来ない。
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