過去ログ | ナノ
『ごめん 明日パス。』
予定をキャンセルされるメール。あたしはまたか、なんて思いながらケータイを閉じる。ベットに座りながら壁に寄り掛かると明るい部屋の静寂に気付いた。
「…はぁ」
彼が忙しいのは分かる。ウチの学校のサッカー部は強豪チームだから、1試合1試合気合いを入れて挑むのも分かる。彼がサッカーをどれだけ好きか、それも分かる。けど、あたしの事をどれくらい思ってくれているのかは、どれだけ考えても分からない。さっきの素っ気ないメールだって、ただ用件だけ伝えてそれで終わり。
(あたし、彼女である意味あるのかな)
疑問と不安を抱えながらも、あたしはいつもいつも彼の事を考えていた。どうすれば気が付いてくれるのかな、どうすれば通じてくれるのかな、どうすれば、彼の気持ちが分かるのかな。ぐるぐると思考を働かせても一向に答えは出ない。何か行動に移ろうとしても、彼がこの多忙さではどうする事も出来ないのだった。
消失感。今彼は何を考えているのだろう。どうせあたしの事ではないのだろうけど、あたしの事だったら嬉しいな、なんて、淡い期待を持ってみる。そんな可愛らしい事を考えている反面、別れた方がマシなのかな、とかネガティブな発想も生まれはじめて。
(淋しいよ、佐久間)
ピリリ…
閉じたケータイが着信を知らせる。メロディーに合わせて光るライトが表示したのは彼の名前。珍しい、彼から電話が来るなんて。純粋に驚きながらもケータイを開けば、確かに画面には彼のケータイ番号が表示されていた。
「…もしもし」
『もしもし、名前?』
「どしたの、こんな時間に」
『いや、…特には何もないけど…』
佐久間の声だ。そりゃ彼からの電話だし、当たり前だけど、久々に聞く彼の声に安心感を覚えた。
「珍しいね、佐久間から電話かけてくるなんて」
『なんか、メールだけじゃ悪い気がして』
「そっか」
自然と綻ぶ口元。それでも拭いきれない不安があった。このまま別れを告げられたらどうしよう。さっきまで考えていた事が的中したら、それはそれでショックで、あたしの中には一気に不安が渦巻き始めた。
『ごめんな、約束守れなくて』
「いいよ、佐久間も忙しいみたいだし」
『…なぁ、名前』
「…何、?」
彼の次の言葉までの間が、異常に長く感じた。やだ、やだよ佐久間。別れたくなんかないよ。あたしはまだ佐久間の事が好きだよ、ずっとそばにいたいよ、別れてなんて、言わないで。マイナスの方にしか進まない思考が何もかも支配する。既に泣きそうになりながら、あたしはケータイを耳に押し当てた。
『ちゃんと、好きだから。お前の事』
悲しみで溢れた涙は嬉しさと共に頬を伝った。よかった、まだ佐久間はあたしと同じ気持ちで居てくれた。ケータイを握りしめたまま、あたしは溢れ出る喜びを噛み締めるように立てた足に顔を埋めた。
「…知ってるよ、佐久間」
I want to meet.
(抱きしめて欲しい気持ちは消えない)
101011
もっと…/西野カナ:nzm様リク
なんだかひたすら甘い話になってしまいました…切ないだけって…今の私には辛かったんです…曲が辛過ぎて幸せになって欲しかったんです(´д`)我の勝手な願望でした。
こんなんでよければ…喜んで下さると嬉しいな…