過去ログ | ナノ






時計が音を立てる。暗闇の中、あと数分でまた“今日”が始まる。
闇に沈んだ部屋で、シワのよったシーツに包まった。黒く染まった自分をいくらか隠してくれるのではないかと、少し思った。隠れれば、そこから出た時、幾分か闇から這い出せるのではないかと、安易に考えた。


(…自分は、強くなったのだろうか)


自ら闇に堕ちていった筈なのに、今だ後悔と不安が頭を過ぎる。自分の道は間違っていないだろうか、失敗ではないだろうか、強くなれるのだろうか。エイリア石は確かに力を与えてくれるが、不安までは拭いさってくれないのだった。


(暗いな、)


部屋を見渡せば何もない。ただ壁が迫るように空間を作り出しているだけだった。


(…名前)


過去は棄てた筈なのに、どうしても消えない存在がまた心で名前を呟かせる。その存在が不安の根源となっている事は分かりきっているのに、毎日忘れようとする度、嫌という程に思い出す。名前の顔。手の感触、匂い、声、笑顔までも、鮮明に。
独りになると、虚しい。確かな力を手に入れたのに、女々しい自分に気付かされる。振り払いたくて叫ぶが、なにもない部屋にはただ反響するだけだった。


「―――…名前」


あの頃の自分にはなかった感情。“淋しい”。彼女が居ない、ただそれだけのことで、力だけではどうする事も出来ない穴が開いた気がした。まるで跳べない鳥、泳げない魚。ここに来る前に感じていた消失感が振り返す。そして思い知らされるのだ。


自分は彼女を手放してはいけなかった。


再度シーツを自分に引き寄せる。布の擦れる音が耳に届いて、孤独を感じた。

名前の声が聞きたい。そう願う程に、自分が今ここに居る理由を遠ざけたくなった。白に包まれば、自分を隠せば、彼女は戻って来てくれるのか。今このまま、明日を迎えれば、彼女は現れてくれるのか。そんな幻想さえ抱きながら。
強くなる、その為に踏み入れた世界。後悔はしないと誓った。もう戻れないと知っている。だから



「さよなら、名前」



終焉を告げるように、また長針が音を立てた。















(俺にはもう、翼はない。)

























101007
雫/スキマスイッチ:レイ様リク
ただただ暗い感じになってしまいました><申し訳ありません。3拍子だったからワルツ。そんな理由。なんか終わり方がベタだなぁ…(´・ω・)
闇丸さんもグルグル悩んでれば萌え^p^中学生にしては波瀾万丈すぎる人生だと思うんだ。辛いぜ思春期厨二病

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