過去ログ | ナノ






「……源田、?どうしたの」

「………」



(何やってんだ俺…)



怯えたように俺を見返す彼女の目には疑問と不安と戸惑いが溢れていて、益々自己嫌悪に苛まれる。俺は別にお前を不安にさせたい訳じゃない。怖がらせたい訳じゃない。なのに、この感情が止まらない。自分でも制御出来ないくらいに今の俺は不安定だった。彼女の肩の上を通り壁についた腕は彼女の自由を奪い、どうしようもなくなって、彼女は俺を見つめるしかなくなっている。俺は彼女と一瞬目を合わせたがすぐに反射で目を反らせてしまっていた。


「源田?―――」

「名前」

「…何?」


彼女の言葉を遮って名前を呼ぶ。その声に驚いたように彼女の肩が跳ねる。多分恐怖しているのだろう。無理はない。いきなりこんな事をしていて、いくら付き合っているとはいえ不安になるだろう。そのくらい俺だって分かっていた。


「…なんで、」

「?」

「――…何で他の男と仲よさ気に話してんだよ」

「え、」

「だからッ!」


どうにか抑えつけようとするものの、どうしようもなく感情が溢れ出す。まるで崩壊したダムの様にバラバラと心臓の膜が壊れていくように、俺は彼女に言葉をぶつけた。逃げたくても逃げられない状態の彼女の目の前で俺は押し殺しながら声を張り上げる。彼女は目をきつく閉じてそれを必死に堪えながら聞いていた。一瞬だけ腕か彼女を傷付けようと狙う。しかしそれは俺の理性がなんとか抑えてグッと手を握った。成す術がなくなったその右手を彼女の顔の横近くの壁にたたき付けると、彼女の肩はビクッと跳ね上がった。




「…ごめん、源田」




静まった空間に響いた彼女の謝罪の言葉。それを聞いて俺は完全に我に帰った。改めて見ると、彼女は俯いてふるふると肩を震わせて泣いていた。嗚呼、俺は理不尽になんて事を。彼女が謝る必要なんて無いのに。彼女は優し過ぎるから、俺の代わりに謝ってくれてるんだ。本当は分かっていた。彼女は愛想がよくて、誰にも無意識に微笑んでしまう事を。俺はそんな誰にでも自然に優しさを向けられる彼女を好きになったのに。それをすっかり忘れて自らの独占欲だけに従って彼女の優しさに甘えてしまっていたのだ。自分の彼女への行動を悔いながら、俺は彼女を拘束していた腕を降ろした。



「………ごめん、名前」

「いいよ、あたしも悪いとこあったんでしょ?」

「お前は悪くない。悪いのは俺だ」



俺が弱いからお前に当たってしまう。悪いと分かっていながらそうせざるを得ないと勝手に都合よく解釈してしまう俺がいる。無意識にお前の自由を奪ってしまう弱い俺がいる。それがこの事態の元凶。悪いのは全部俺。彼女は自由になってもそこから動こうとはしなかった。そのまま、ただ俺に優しい視線を向けるだけ。誰にも平等で変わらない、あの優しい視線を向けて困った様に微笑んでいた。


「源田が謝りたいなら謝りなよ、あたしも謝りたいから謝っただけだから」


そう。いつもお前は優し過ぎるんだ。だからどうしようもなく俺は甘えてしまう。違うんだ名前。俺は不安なんだ。そのお前の優しさが、もしいつか急に無くなってしまったら、その時俺はどうすればいいんだ。その時に何も出来無くなってしまう自分しか想像出来なくなって、そうなるのを考えたくなくて、だからお前には頼れないだけ。彼女は手を差し延べて、俺のだらりと下がった手を両手で包み込んだ。小さいその手じゃ俺の手を包むのは難しい。でも彼女は出来る限り手を広げて俺の手を掴んだ。ふと顔をあげると、彼女は祈るように目をつむっていた。



「無理に押し込まないで、そんな無茶してる源田、あたしは好きじゃないよ」



滑らかに感情を乗せて歌うように呟かれた言葉1つひとつに思考が働いてどうしようもなくなる。俺はただ、彼女の優しさを噛み締める様にして、その手を握り返すしか出来なかった。

















(誰にも渡したくなかったからで、)

























091220
いろいろもどかしすぎて文章がぐちゃぐちゃです。即行クオリティー\(^O^)/長ぇwww

title:確かに恋だった

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