過去ログ | ナノ






「お前が好きだ」

「―――……え」




突然溢れ出した言葉に自分でも驚いてしまう。何故いきなり俺はこんな事を。こんな事言うつもりなんて無かったのに。きっと今窓を閉める瞬間に狭くなった隙間から吹いた風が彼女の髪を揺らしたから、それを押さえる彼女の手が、指が、横顔が、瞳が、綺麗過ぎたからいけないんだ。自分の言葉に感情が溢れ出す。嗚呼、後悔が後を絶たない。彼女は俺の目の前で窓の鍵に手をかけたまま目を見開いて固まっていた。


「……今、なんて」

「お前が…好きだ。名前」

「なんでいきなりそんな事」

「なんでだろ…俺にも分からない」


素直に答えると彼女は表情を変えずに手を鍵から離して自然に降ろす。その手に俺は感づいた。あ、嫌われた。彼女は俺にそんな事望んでなかった。ただの“友達”だったんだ。それなのに俺は感情任せにその関係をあっさりと崩してしまったんだ。自分でもバカな事をやったと呆れてものも言えない。彼女は俯いている。降ろした手をまたあげると、それで口元を抑えた。微妙に肩が震え出している。…もしや、泣いてる?そんなにショックだったんだろうか。俺は内心大パニックだった。


「………名前、あのっ」

「…プっ」

「…………え、」

「あはははは!」


彼女は腹を抱えて笑い出した。いかにも“楽しそう”に眉を下げて無防備に。てっきり泣いていると思い込んでいた俺は面を喰らいポカンと間抜けに口をあけて驚いてしまう。


「ま、丸がっあたしの事好きって!あはは!今更!」

「今更って!お前!」



「知ってたよ」



ひとしきり笑い終わると、彼女は落ち着きと興奮の間のような、でも安定した声で言った。俺は目を見開く。当たり前の様に微笑む彼女に複雑な心境になる。知ってたよって…それじゃ今まで悩んでた俺がバカみたいだ。それを言うと彼女は「悩んでたの?バカだなぁ」と皮肉るように苦笑を返した。バカって。なんだよバカって。人が折角必死になってたって言うのにそれはいくらなんでも酷いんじゃないのか。


「だって丸分かりやすいもん」

「…いつから知ってた」

「ずっと前。丸があたしの事を好きになった日から」

「随分前だな」

「でしょう?」


皮肉を返そうと言ってみたのに、それを綺麗にスルーされる。なんかもう…俺の立場がないっていうか。若干脳が何かを諦め始めていた。それが彼女への感情なのか、俺のプライドなのかよく分からなかったけど、大半は俺自身の“恥”だろう。彼女は変わらず笑っている。すると下校時間を告げる鐘が鳴った。「あ、」とそれに反応すると、彼女は俺に向かって手を差し延べてきた。




「帰ろう。丸」

「…え」

「下校時間。ほら、早く帰らないと先生に怒られちゃうよ」

「え、ああ」

「ほらっ」




戸惑っていた俺を知ってか知らずか、彼女は俺の手に自ら手を伸ばして掴んだ。そのまま玄関まで走り出す。俺に“掴まれた手を振り解く”という手段は思いつかなかった。仕方なくそれについて行くしか成す術はなく、ただ彼女の速度に少し足取りが遅れながらも後を追った。彼女は声をあげ楽しそうに笑っている。彼女のスピードにも慣れ、俺は自然に彼女の隣に並んだ。困ったように、でも幸せそうに笑い続けてている彼女がなんだかもどかしいくらいに可愛くて、俺は掴まれた手を思わず優しく握り返した。















(言葉にならなかったからで、)
























091219
僕がきみの手シリーズ。お題をお借りしてやっていこうと思います。
丸久しぶり\(^O^)/ヒロインが風丸を丸と呼ぶのは我の愛の証。仲良しな設定だと自然にこうなってしまうのは我の性(治せと

title:確かに恋だった

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