過去ログ | ナノ






「韓国!?」


露骨に驚いた表情で声を上げる名前。青空が広がる屋上で、風変わりな名前の少年はこう告げた。


「韓国でFFIに出るよ」

「韓国って、照美…アンタって韓国人だっけ」

「そうだけど」


知らなかったの?と、さも常識のように問う彼に、名前は目を見開いたまま首を横に振った。日本人にしては端正な顔立ちだとは思っていたが、まさか日本人ではないとまでは思うまい。日本語も流暢に話せてしまうし、その上サッカーまで出来るなんて。文武両道とはまさにこの事。同い年とは思えない彼の存在に名前はもろにショックを受けていた。


(何だこいつ…生きてる次元が違いすぎる)


座っているのに立ちくらみのような目眩が襲う。頭を押さえて耐える彼女に、照美と呼ばれたその少年は平然と大丈夫?なんて声をかけていた。授業がある英語でさえ満足に話すことが出来ない名前にとって、何とも屈辱的なことだ。流石勉強大国韓国。日本とは大違い所ではない。


「え、で…何?韓国に帰るって事?」

「まぁ、怪我も治った事だし」

「…そっか」


さっきまでの間抜けた表情とは打って変わり、暗い表情を見せる名前。照美の怪我が治った事は喜ばしいが、それによって彼と離れなければならないという事実に、素直に喜ぶことが出来ない。彼女の中には複雑な思いが渦巻いていた。


「ねぇ、名前」


黙り込んでしまった名前に対し、照美は明るい声で提案した。



「一緒に韓国に来ないか?」

「―――…え」



夢にも思わなかった彼の誘いに、俯いていた顔を反射的に上げる。言葉の意味を完全に理解すると、咲羅はまた眉をひそめた。
彼女は元々雷門のマネージャーであって、彼が助っ人に来るまでは殆ど無縁に近い関係である。そう簡単に彼女が雷門を離れる訳には行かなかった。


「あたしは―――」

「―――…なんてね」


彼女は断る事を分かっていたのだろう。照美は彼女の言葉を遮って冗談めいた声色でそう言った。少しだけ驚きつつも、咲羅は照美に目を向ける。


「君が雷門を離れない事ぐらい分かってるさ、ちょっとした冗談だよ。真に受けないで」

「…本トに?」

「――…え?」

「本トに、冗談なの?」


予想外の反応を示す彼女に、照美は少しだけ目を見開く。彼女も思ったのだ、彼と一緒に行けたら、どんなに幸せだろうと。少し淋しげに真っ直ぐ見つめてくる視線に、彼は良心を射抜かれたように目を伏せた。


「…冗談で済んだら良かったのになぁ」

「……ごめん」


改めて名前が誘いを断ると、照美は苦笑しながらクシャリと髪を掻き上げた。分かりきっていた事なのに、この心臓の奥にある重みはなんなのだろう。元々彼女とは相容れない定めだった筈なのに、今この胸を苦しめる感情はなんなのだろう。


「ねぇ、名前」

「何?」

「君は、僕をどう思う?」


好きとか、嫌いとか、そういうのは言わなくても分かってる。ただ存在としてどう思うか。詳しく言わなくても意味は通じているようで、名前は思考を巡らせるように目を閉じた。ふぅ、と軽く息をつく。それに反応するように風が2人の間を吹き抜けると、名前はくすり、と笑って彼を見た。



「サッカー好きの、ただの人間」



どれだけ頭脳が違えども、人種が違えども、お互いにサッカーが好きな事に変わりはない。“ただの人間”。彼の今までの人生の中では、彼女の言葉が1番の救いだった。


「……そっか。良かった」


満足げに微笑んだ彼に、名前も笑いかける。次会う時はライバルだね、なんてベタな事をお互いに言い合いながらも、彼らはお互いに相手の気持ちを聞き出そうとはしなかった。今相手の気持ちを聞いてしまったら、きっと離れられなくなってしまうから。それに、わざわざ言葉にしなくても分かっているのだ。


―――僕は―あたしは―――
















(世界の舞台で、君に伝えよう)

























100622
・・・・・・(・ω・`)あれ?
なんだこのgdgd感は・・・どうした照美・・・・・まさか時差ぼけ、だと・・・?!\ピンポーン/
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