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「あー寒ー…」


白い息を吐いて自分の手を温めてみるものの、その効力は小さなもので、名前はずっと寒そうに手を擦っている。風丸はそんな名前を隣で観察しながら呆れたような表情を浮かべていた。


「手袋とか持ってくればいいのに」

「忘れたの」

「朝余裕もって起きないから」

「寒いから布団出たくないの」

「そうやって朝からおばさんに起こられるんだろ?」

「もっと優しい母が欲しかったな」

「十分優しいよ」


話している最中も行きを吐いて手を温めている名前。それもそうだろう。彼女は手袋以外も何も持っていないのだ。見た目からして寒い格好の彼女を見て、風丸はそれを見て自分の事のようにため息をついた。


「いいなぁ丸。マフラーあって」

「お前も持ってるだろうが」

「家ですけどね」

「持ってこなきゃ意味ないけどな」


暖めようと努力するものの、彼女の手は一向にその状態が変わらないまま。寧ろ悪化しているようで、すでに真っ赤になって痛々しい。そうなる事ぐらい分かってただろ。そう心の中で呟きながらも初雪の降る空を見上げながら風丸は白い息をふぅ、と吹き、また彼女を見た。


「ほら」

「え?ちょ…」


あまりにも寒そうな彼女を見兼ねて仕方なく自分の首下からマフラーを取ると彼女の首にかける風丸。少しだけ力をこめてキツく巻き付けると「きつッ」と小さく呟いた。


「もー丸ー」

「なんだよ礼ぐらい言ったらどうなんだ」

「毛糸チクチクする」

「我慢しろよそれぐらい」


文句を言われるものの、これであの痛々しさが少しでも解消されるならそれでいい。マフラーを自分なりに整えると、名前は風丸に手を差し伸べた。


「…手、寒い」


名前に貸したマフラーで風丸には手持ちの防寒具が何も無くなってしまった。そんな彼に対する彼女なりの礼なのだろう。全く、素直じゃないな。とまた心の中で呟きながらも風丸は小さく笑ってその手をとった。


「……わがまま娘」


手をつなぐと彼女はマフラーで埋もれた口で「うるさい」と呟いた。
















(そのマフラーあげるよ)(いらない)(素直に受け取りなさい)

























091117
地元に雪が降ったので思い付いたイナズマ初雪シリーズ。
男子学生+制服+マフラー=ジャスティス。
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