過去ログ | ナノ






「この景色も最後かぁ」


夕日に染まる小高い丘の上で名前は微笑みながら呟く。親の都合で明日にはこの町を去っていく彼女の姿を俺は後ろから見つめていた。


「いろいろあったね、今まで」

「ああ」


思い出を掘り起こすように小さい頃からの出来事をひとつひとつ大切に語り始める彼女はいかにも幸せそうで、不意に胸が締め付けられる。昔からある彼女に対するこの感情の意味が俺にはまだ理解出来ていなかった。


「そういえばあっちの公園にタイムカプセル埋めなかったっけ」

「そう、だったな」

「あーあ、掘り起こせない間に引っ越しか。つまんないの」

「またここに来ればいい話だろ」

「………そうだね」


その間はまるで“それは叶わない”と暗に告げているようで、また胸の締め付けが強くなる。段々と彼女との別れを、彼女との再会が無いと自覚していくように、俺の心は痛みに耐え切れず崩れていきそうだった。




「…好きだ、名前」


「え、」



思わず口にしていたその言葉に自分でも驚いてしまう。彼女が振り向こうとした瞬間、強い風が吹いて彼女の髪をなびかせた。ふわふわと揺られる髪が夕日の光に照らされて、今にも消えそうだった。


「なんで」

「え」

「なんで今そんな事言うの」

「なんでって」

「今日でお別れだっていうのに、なんでそんな事言っちゃうの」


風が止む。髪で隠れていた彼女の目元には大粒の涙が溜められていた。嗚呼、俺はなんで最後の最後で名前を泣かせているんだろう、そんなつもりは無かったのに。謝罪の気持ちが溢れ出す中で、俺は彼女の言葉を聞いた。


「どうせなら、友達のままで別れたかった」


嗚呼、ダメだ。なんで彼女が泣いているのかが自分のいいようにしか解釈出来ない。名前、名前。泣かないで、俺もお前が好きだよ。でもお前がそう言って泣くなら、最後くらい願いを叶えてやれるかな。俺は彼女を抱きしめたい衝動を抑えて手を差し延べる。涙を拭っていた手を止めて「え、」と呟く名前。



「今のは忘れろ。お別れだ名前。友達のまま」



ダメだ、今泣いてはまた彼女を裏切る事になってしまう。俺はあまりそういう事は分からないけど、多分そうだ。そんな気がした。間違っていて、もし彼女に嫌われたとしても、それは多分それでいいんだろう。彼女は俺の手を見て目を細める。そして小さく微笑むと、俺よりも二回りほど小さい手を差し延べて俺の手に重ねた。





「……バイバイ幸次郎。あなたと友達になれてよかった」





胸がまた締め付けられる、後悔が残る。何故今になって彼女への想いが分かってしまったのだろう。でもその事をこれ以上伝えるつもりはなかった。俺らは今“友達として”別れを告げたのだから。溢れ出す感情を堪えるようにして、俺は出来るだけ優しく彼女の手を握り返した。


























(きみが愛しいと気づいたから)

























091226
\(^O^)/なんかシメをどうすべきか分からんかったわ\(^O^)/
これにて「僕がきみの手」シリーズ終了でござる^^自分乙!今日は真帝国よー!早く寝て早く見よう!

title:確かに恋だった

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