過去ログ | ナノ






「源田ってお兄ちゃんみたいだよね」

「は?」


帰り道。いきなり言い出した名前の言葉に俺は思わず間抜けな声を出してしまった。


「弟とかいっぱいいそう」

「いねぇよ」

「知ってるよ」


俺の1歩前の歩道と道路を分けているブロックの上をバランスを崩さないように歩きながら名前は笑っている。子供みたいな事しやがって、同じ中2とは思えない。


「危ないからもっとこっち歩けって」

「ほらお兄ちゃん。でもどっちかっつーとオカンみたいかも」

「・・・・・」


もう返す言葉もない。“オカン”って言われる俺の身にもなってみろ。微妙この上ないんだからな。そんなどうでもいい会話をしながらゆっくり歩いていたはずだったのに、気づけばもう俺の家の前。今日はここでお別れだ。


「あー、ついちゃった。バイバイだねお兄ちゃん」

「お前その呼び方やめろよ」

「いいじゃんあたし気に入った」

「お前が気に入ったとかは関係ないんだっつの」


変わらず笑っている名前。なんだか腹が立ってきた。なんだよ“お兄ちゃん”って。マジで子供かお前は。心の中で呟きながら彼女を見送ろうと玄関前で彼女の姿を見る。もう辺りは暗い。電灯があるから道は照らされているが、流石に女子1人じゃ不安。


「1人で大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫」

「信用ならねぇな」

「大丈夫だって」


軽く笑って言う名前が、いつにも増して信用ならない。こいつひ弱だからなあ。そんな事を思っていても言ったらブチ切れるだろうから言わない。怒る時だけは恐ろしいからな…


「じゃあな、気をつけろよ」

「分かってるって。バイバイ幸次郎お兄ちゃん」



・・・・・



「待て名前」

「何ですか」

「今なん言った?」

「分かってるって。」

「その後」

「バイバイ」

「その後」

「幸次郎お兄ちゃん」


平然と俺に答える名前。玄関の明かりでしか照らされていないが、その表情は本当に普通そのものだったが、俺の中の何かを壊すには充分過ぎた。初めて名前に名前で呼ばれた。それが個人的には重要だったわけで。


「どうした源田」


ほぼ無表情で俺に問う名前はまた苗字呼びに戻っていた。やっぱり“お兄ちゃん”ってのがついてないと名前呼びはしてくれないのか。なんか悔しい。というか、…いいんだけど…うーん。


「…あーあ。なんかお前可愛くない」

「可愛くないって何。」

「可愛くない。けど送って行く」

「えー、いいよ別にー弟待ってるんでしょー?」

「居ないっつの。本ト可愛くないなお前」

「わーい幸次郎お兄ちゃーん!おかえりー!」

「あーもう可愛くない可愛くない!」


無邪気に笑いながら俺の少し先を小走りで進んで行く名前にため息をつきながら俺はほぼ付き添いのような感じで彼女を送る為ついて行く。名前で呼ばれた事により動揺した自分を隠そうと出来るだけゆっくり。離れすぎないように丁度いい距離を自分なりに測って、気持ちを落ち着けながら。


「お前あんまり早足で歩くなよ!」

「幸次郎―!幸次郎おにいちゃーん」

「ちょっと黙って歩け!」
















(どうせ彼女は無意識なんだろうけど)

























091109
源田って佐助みたいだよね^p^オカンキャラ。料理上手そう。

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