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「源田の手っていいよね」


何を言い出すかと思えば。名前は俺の手をまじまじと見ながら言った。今まで手なんか褒められた事も無かった。個人的には慣れてしまったが(自分の手だし当たり前だろうが)人から見ればゴツゴツしてて好かれる手ではないと思っていたのに。


「どうしたいきなり」

「いや、何となくいいなって思って」


平然と答えてまた俺の手で遊び始める名前。俺は一々抵抗もしないから、そんなに面白いものでもないと思うが。指をテキトーに動かしながら、殆ど無表情で遊んでいる。やっぱり面白くないんだろ、ならやめればいいのに。


「楽しいか?俺の手で遊んでて」

「うん楽しい」

「……」


お前それで楽しいのか。じゃあいつも笑ってるときどんだけ幸せなんだよ。そんなツッコミもこの状態じゃ心の中に仕舞って俺は名前を見ている事しか出来ない。



「ゴールキーパーの手って好き」



こりゃ物好きが居たものだ。キーパーっていったら俺みたいなカタい手ばっかりだと思うんだが。前から不思議なやつだとは思っていたけど、キーパーの俺としては喜んでいいんだかよく分からなかった。


「じゃあ俺じゃなくてもキーパーならいいんだな?」

「ううん。源田の手が1番好き」

「お前俺以外のキーパーの手見たことあんのか?」

「ううん。ない」

「なんだそれ」


あるって言っても逆に不思議っていうか不安っていうか。俺がそんな複雑な心境で居るのも知らずに、名前は自分の手で俺の片手を包み込む。両手を使ってやっと収まるくらい俺と名前では手の大きさが違う。きっとこんな小さい手だったら俺が両手使えばすき間が開くだろう。少し力を入れたら指の1本ぐらいすぐ折れてしまいそうで少し怖い。


「源田の手って大きくて暖かいから好き」

「体温はあまり変わらないと思うけどな」

「ううん。暖かい」

「…あっそ」


つくづく不思議なやつだと思う。名前は俺の手をギュッと握って幸せそうに微笑んだ。


「源田」

「何だ?」

「大好き」

「いきなりだな」


少し驚いて名前を見るが、相変わらず幸せそうに俺の手を握っている。


「源田は?」


俺の目を見ながら平然と聞いてくる名前。なんか犬とか猫とかそこら辺の小動物みたいだ。無邪気というか天然っていうか、どうも俺はこいつのペースに慣れきれないな。微笑む彼女を見ると不思議と幸福感が溢れてどうしようも無くなる。握られた手を出来るだけ優しく握り返してやると、名前はまた幸せそうに微笑んだ。
















(不思議なくらい、あいしてる)




















091108
源田夢とにかく更新しようというやっつけ仕事の賜物。キーパーの手っていいと思うけど源田の手どんだけでかいんだって話

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