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「あー寒…」


生徒玄関に立ち呟く名前。寒がるのも無理はない。彼女は薄手のカーディガン意外防寒具を身につけていないのだ。その隣で源田は彼女の姿にはぁ、とため息をついた。


「お前今日手袋は?」

「忘れた」

「バカ」


バカとは何だバカとは。不貞腐れながら名前は源田を見る。勝ち誇ったようにその視線に合わせると、源田は自分のジャケットからの手袋を取り出す。シンプルなデザインの毛糸で出来たなんとも暖かそうな手袋だ。名前はそれをうらやましそうに見ながらも、ぶんぶんと顔を横に振りながら源田を振り切るようにずんずん歩き出した。


「おい、先に帰るのか?」

「べーだ!源田なんか知らない!1人でぬくぬく帰ればいいじゃない!」


子供のように舌を出して怒りを表すと、頬を膨らませて源田との距離を離していく。源田はどんどん遠くなる名前を数秒見ると、仕方ないといわんばかりの表情でそれを追った。


「拗ねるなよ。冗談じゃねぇか」

「うるさい!ついてくんな!」

「無理言うな。俺の帰り道もこっちだっっての」

「うるさいうるさい!」


普通より早めに歩を進める名前だったが、それではゆったり歩いている源田にさえ追いつかれてしまう。負けじと早足にするものの、それでも源田との距離は一定のままだ。源田は未だゆったりと歩き続けている。


「なあ名前」

「何よ!」

「寒くないのか?手真っ赤だぞ」

「大丈夫!」

「嘘つけ。それであと15分も歩き続ける気なのか?」

「だから大丈夫だってば!!」

「おい待て名前!」


半ば投げやりになりながらも名前は源田に振り向きもせずに進んでいく。そんな彼女に流石にしびれを切らすと、源田の歩も早足になり彼女との距離を詰めていく。あっという間に追いつくと、すっと名前へ手を伸ばした。いきなり手を掴まれ反応で振り向くと、そこには苛立ちを隠せない源田の姿があった。


「何!」

「待てって言ってんだろ!!日本語通じないのかお前は!!」


予想もしていなかった怒りを含んだ源田の声に名前は目を見開く。威勢を無くし、怯えたように源田を見ると、名前はしょんぼりと項垂れた。


「……ごめんなさい」

「分かればよろしい」


素直に謝った名前の頭にポンと手を乗せると、親のような表情で笑う源田。源田の優しくなった声色に顔を上げると、名前は困ったように微笑む。源田はすっと自分の左手にはめた手袋を取り、そして名前に手渡した。


「ほら」

「えー片方?」

「我侭言うな」

「えー」


不満げに唸る名前だが、源田はもう片方を取ろうとはしない。名前は渋々その手袋を受け取ると自分の右手にはめた。


「ぬくい」

「だろ」

「でも片方冷たい」

「……仕方ねぇな…ほら」


名前が源田を見ると、彼は手袋をはめていない左手を差し出していた。それを見て一瞬戸惑う名前だったが、源田が何を言いたいのかを理解すると喜んでその手を握る。源田は握ったその手を自分のジャケットのポケットに入れる。源田本人の体温で暖かくなったポケットの中は、すぐに2人の手を温める。すると空から白い綿のようなものが落ちてきた。ふと空をみると降り注ぐ雪がひらひらと舞っていた。名前は嬉しそうに源田を見てつないだ手をポケットの中で動かす。分かったから、となだめる様に微笑むと、ふぅ、と白い息を吐いた。



「帰るか」
















(こんな事したの幼稚園でお母さんと以来だなぁ)(お前まだ幼稚園児みたいだけどな)(源田のばーか!)



























091117
初雪シリーズ源田Ver.
握手inポケット萌えの法則。源田だけなんか長くなっちゃった

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テーマ「人外ファンタジー」
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