過去ログ | ナノ






「………なぁ名前」

「んー?」


並んだペンギンのぬいぐるみを眺めながら、彼女は唸るだけの返事を返した。俺は見慣れた自分の部屋でソファーに寄り掛かりながら、歩き回る彼女の姿をすることもなく目で追うだけ。暇以外の何物でもなかった。


「そんなにぬいぐるみが気になるのか?」

「だって可愛いじゃん、佐久間の部屋にぬいぐるみがある事が」

「そっちか」


小さい頃からあるものだから、今更捨てるにも捨てられずに部屋に並んでいるぬいぐるみ達。それが今ほど憎らしくなった事はない。折角名前が俺の部屋に来たというのに、彼女はそのぬいぐるみ達に夢中で俺に見向きもしないのだ。そりゃ女子がそういうのが好きなのは知っているが、ここは俺の部屋であって、ぬいぐるみの部屋ではない、当たり前だが。


「なぁ名前」

「何さー」

「もういいだろぬいぐるみは」

「・・・ペンたろう、ペンざぶろう・・・・ペンじろう」

「俺を指すな!」


全く腹が立つ。何だよ上手い事言ったみたいな顔したって褒めてやらねぇぞ。それでも飽きないらしくぬいぐるみを構ってばかりの彼女の後ろ姿を見るだけの俺。―――つまらない、一人でいる時より断然つまらない。


「もういいだろ、それで遊ぶのやめろよ」

「何ささっきから。寂しいの?」

「んなわけ」

「寂しがり屋さんだね佐久間はー、ねぇペンたろう」

「…だからっ」


はぁ、と息を吐くのと同時に思わず立ち上がればぬいぐるみで遊ぶ手を止めて目を見開く名前。何なんだよ全く、俺が行動しなきゃお前は俺に話もかけて来ないのか?ここは俺の部屋だ。なのにお前はなんでそんなにも自由奔放で居られるんだ。そりゃお前がいつも奔放なのは重々承知だが、少しぐらい緊張したりしないのか?無防備にも程があるだろ。少しは考えろよ、仮にもお前は俺の彼女だろ。
いいたい事は山ほどあった。でも全部言葉にするのは流石に無理があった、多過ぎて言い切れない。
半ば睨むようにして彼女をみれば真っ直ぐに俺の方を見ていた。その間もぬいぐるみは離さない。腹立つ。少しくらい手離してみろよ、ずっと持ってても絶対やらないからなそれ。


「―――…佐久間さ、」

「何だよ」

「ペンたろうに、ヤキモチ妬いてんの」

「・・・・は?」

「だってそうでしょ」


疑問ではない、確定した事実のように告げられた彼女の言葉は小さな衝撃となって俺に伝わった。俺が、嫉妬?そのぬいぐるみに?おもちゃ取られたガキじゃあるまいし、俺がそんな―――
思考を巡らせてさっきまでの自分を振り返ってみた。
―――…あ、なんか…確かに…


「・・・・・・、」

「佐久間、顔赤い」

「うるさい!」

「分かったよ、佐久間とも遊んであげるから」

「そういう問題じゃ」

「じゃあペンたろうと遊んでるよ、いいの?」

「……お前なぁ…」


俺が吃れば名前はニヤリと笑ってぬいぐるみを投げ出してこっちに飛びついてきた。勢いあまって立っていた俺はベッドの方に倒れ込む。あはは、と楽しそうに声をあげて笑いながら覆いかぶさる彼女。視界の端に見える投げ出されたぬいぐるみに舌を出して抱きしめる腕に力を込めれば、満足そうにこちらを見ている彼女に視界を支配されて、俺は何も言わずに小さく笑いを返した。
















(1ミリでも離れたくないんだ、君の全てと)

























100422
お待たせしました(´д`;)水輝 風様リクの「嫉妬・佐久間」です!こんなリクだったかな・・・あれ、佐久間の激甘の・・・でしたよね(=・ω・`)?←
途中でケータイ変えちゃってアバウティーなんですが(言い訳)本トすみませ…!
リクありがとうございました^^
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