過去ログ | ナノ






「佐久間嫌い」

「はぁ?」


なんだか纏まらない気持ち。だけどこの心の中をどうにか言葉にしたくてあたしは行き当たった言葉を口にした。佐久間は疑問符いっぱいみたいな顔でこっちを見ている。そりゃそうか。いきなりなんの前触れもなく嫌いなんて言われて驚かない方がおかしい。こっちを見る佐久間の視線に胸がチクチクする。顔が熱くなってくる。最近はいつもこう。しかも佐久間ばっかりこうなる。だから


「佐久間嫌い」

「繰り返さなくていいっつの分かったから」


なんだよあたしの気も知らないで分かったとか。佐久間は絶対分かってない。このあたしの心のモヤモヤした感じは絶対伝わってない。だってあたしだってしっくり来てないんだから。別に佐久間が嫌いって訳じゃなくて、このモヤモヤっとした感情になるあたしが嫌いなのだ。はっきりしないのは嫌い。だから今のあたしは嫌い。そんな感情にさせる佐久間がイヤ。それなら佐久間から離れればいいんだけど、近くに居たいっていう本能みたいのがあたしをそうさせなかった。


「…うーん…佐久間のバーカ」

「何なんだよさっきから」

「わかんない。けど佐久間のバーカ」

「意味わかんねぇ。最近どうしたんだよお前。ここんとこ変だぞ、前からだけど」

「一言余計だ」


ベーと舌を出して苛立ちを表現するが、女らしくない、と佐久間は視線を元に戻してしまった。なんだか淋しい気持ちが残る。


「最近さ…あたしおかしいよね。自分でも分かる」

「だからさっき俺が言っただろうが」

「違くて、なんか…」

「…………どうした?」


言葉が見つからなくてどもると佐久間は心配そうにこちらを見てきた。モヤモヤする。胸の真ん中に大きな雨雲でもあるかのようなそんな感覚。時々チクチクと心臓を刺すような痛みが走って辛くなる。普通にしてればそんな事ないのに佐久間が居る時だけだそうなってしまうのだ。どうしようもないもどかしさが襲う。気持ちをはっきりさせたいのに上手く言葉が見付からなくて口吃ってしまう。心配そうに見てくる佐久間が視界に入るとふいに心臓が跳ねてまた顔が熱くなった。


「お前顔赤い、熱でもあんのか?」

「いやっあの、違くてっ」


佐久間の手が伸びてきてあたしの額に触れる。ひんやりした佐久間の手が心地良くて、あたしは冷静さを取り戻すと同時に、ぐちゃぐちゃだった頭の中が整理ささっていくような気がした。
そしてやっと言葉が見つかる。でもそれを口にするのは凄く恥ずかしくて、しかもそれを言っている自分を想像してまた自分が嫌になった。


「熱は、ないな。ボーとしたりするか?」

「…………あのさ、佐久間」

「何だ?」


ずっとモヤモヤしていた胸の中の雨雲が晴れていく。はっきりした言葉に、嫌悪が走って一瞬口をつむぐが、今まで悩んでいた自分が無駄になるのはそれ以上に嫌で、あたしは意を決して口を開いた。




「佐久間…好き」



「…………………は?」

「大好き、でも嫌い」

「……何が」

「佐久間。そんで、あたし」


状況が読み取れていないであろう彼を見ながら、今自分が置かれた状況を再確認すると、なんだか心の底から笑いが込み上げてきて、あたしは困惑した表情の佐久間の目の前で1人笑っていた。
















(大好きなのはあたしを見てくれる君で、嫌いはあたしをドキドキさせる君で)
























100116
orzorzorz{ちょっとグングニル食らってくる

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