過去ログ | ナノ
「さっくん!見てほら!すっごいオレンジ!」
そう無邪気に夕暮れの空を指差すと、小高い丘まで上がって行く名前。俺はそれを見ながら自分のペースで歩いてついて行った。
「明日晴れかなぁ。よかったね、明日も練習あるんでしょ?」
彼女は一々俺の返事を求めてはいない。多分そう。だから俺も一々答えたりしない。ふと彼女を見ると、不思議そうに俺を見る彼女と目が合った。
「……」
「どうかした?」
「いや、別に」
現在俺は中学二年生。名前は高校一年生である。告白は俺からで、一瞬戸惑っていた名前だったが、状況を把握すると、柔らかく微笑んで了承してくれて、それから俺らは恋人同士となった。
俺と名前は小さい時からの知り合いで、彼女から見れば俺は弟のようなものだったのかもしれない。いや、恋人同士となった今でも“弟”という枠から抜け出せて居ないのかもしれないが。その証拠に彼女は俺の事を“さっくん”なんて子供じみた呼び方をする。俺はそれが気に食わなくて仕方なかった。
「どうしたのさっくん。ぼーとして。疲れてる?早めに帰ろうか」
ほらまたそうやって。子供扱いするなよ。
名前が嫌いな訳ではない。寧ろ好きすぎて自分でも困ってしまう程だ。だから余計にそういう扱いの仕方が気になって腹立たしい。
まただ。そうやって俺の顔を不安げに覗き込んで。俺はもう子供じゃないのに。
“恋人”として扱って欲しいのに。
「ほら、明日も練習なんでしょ?早く帰ろうさっく―――」
「…次郎。」
「…え?」
「次郎って呼べよ」
「何いきなり…」
「子供扱いすんなって言ってんだ!」
思わず叫んでしまった。驚きで目を丸くする名前。
(しまった…)
心の中で後悔するものの、そんな事名前に伝わるはずも無く、俺が一度伏せた顔を上げると今度は彼女の顔が下を向いていて、ただ艶やかな髪が夕日に照らされてオレンジに照り返しているだけで、どんな表情をしているのか読み取れない。
「、名前…」
小さく呟いても顔を上げてくれない。どうしよう、嫌われたかもしれない。ふと過ぎった嫌な予感が思考の殆どを支配して俺は顔をしかめた。
「…ごめん」
彼女から発せられた謝罪の言葉。何故謝る?謝らなければ俺の方では?疑問と申し訳なさが心を巡る。
「なんで謝るんだよ?」
「さっくんって呼び方、嫌いだったんでしょ?」
「だからって謝る事ないんじゃ」
「…あの、」
「…?」
顔を上げた彼女の顔は、夕日の所為かほんのり赤く染まっている。眉を潜めて困ったような表情になりながら、名前は俺を見た。
「今更名前呼ぶの、恥ずかしかっただけ」
「…は?」
「だから!恥ずかしかったの!名前呼びするのが!」
「…、」
なんだそれ、恥ずかしい?名前が、俺に恥ずかしいって…何?
名前は叫んで顔を伏せると、あーっと恥ずかしそうに顔を手で隠してしまった。やっと彼女の言葉を理解して再度彼女を見ると、眉を下げて唸る姿が目に入った。
「…なんだ」
「なんだとは何だよなんだとは!」
「いや、なんでもない。ありがとう名前」
「うわ、さっくんにお礼言われた。あ、さっくんって言っちゃった!ごめん」
「もういいよ、それで」
「え?」
「いい。無理やり名前で呼ばなくても今まで通りでいい、なんかそう思えてきた」
「えー、だったらそう言ってよ。無駄に暴露しちゃったじゃん」
「なんだよその言い方」
「だってさー」
後悔と悔しさに頬を膨らませる名前だったが、すぐにバカらしくなったのか困った様に笑った。
「…さっきはごめん」
「なんで謝るの?」
「いや、怒鳴ったりして」
「いいよ別に。さ、帰ろう暗くなっちゃう」
「…あぁ」
もう名前の手より俺の手は大きくなって少しだけ嬉しいけど、子供扱いするなと言っておきながら、差し出された彼女の右手を自然と握ってしまう辺り、自分も彼女の優しさに甘んじてきたのだと自覚して苦笑した。
早く帰ろう
全て君の愛情表現
(さっくんが嫌なら次郎ちゃんだね)(だからそれもういいって)
091107
\(^O^)/さっくん分からん\(^O^)/
自分高校生なのに中二がこんなに好きでいいんだろうかって思いながら書いた←
話めちゃめちゃだけどいいやってあたしは諦めてんだ最近