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「またヘコんでるのか、名前」


あたしが何も言わなくても、彼は何でも分かってしまう。超能力か何かなのかと疑った事もあったけど、どうやら彼にとってはあたしがとてつもなく分かりやすい存在らしい。多分、そんな事言ってた。


「で、今度は誰だよ」

「丸が知らない人」

「…あっそ」


机に伏せるあたしの隣に座る彼。そこ、誰の席だったかな、覚えてないけど。そんなのどうでもいいし。


「お前が俺に知らない人って言うときは大体芸能人だろ」

「何でも分かるの」

「いつもだろ?」


経験だよ、と苦笑する彼。そういやあたしがヘコんでる時っていっつも隣に居てくれたなぁ。あたしがそれを嫌がらなかったのは多分、彼に対する安心感があるから。誰の近くに居るよりも、彼が隣に居てくれるのが1番落ち着く。


「どうせお前の事だから、あと1週間もすればまた好きな人出来たとか言い出すんだろうな」

「そんなに軽くないよ」

「軽いだろ」


呆れたように言うが、じゃあ何でそんなに軽い女を毎回慰めてくれるのだろうか。彼はあたしの事をすぐ分かってしまう様だけど、あたしは彼の事が分からない。何か、不公平じゃないかな。


「お前好きな人の定義間違ってるよ」

「何いきなり」

「周り見ない癖に、たまに視野に入った男が居るとすぐその人だって思うだろ。それ、多分違う」

「…なんで分かるの」

「え?」

「何で、丸は何でも分かるの?あたしは丸に何も言ってないのに、何で分かるの」


半ばムキになっていたのは、全部図星だったから。全部バレてる、それが恥ずかしかった。丸に“コイツは軽い女だ”って思われたくなかった。でも全部知られてるから、
涙が出た。


「何いきなり泣いてんだよっ」

「だって、何かよくわかんないけど、丸がっ」

「俺?」


丸は優しくて、分かってくれて、受け止めてくれて、嬉しくて、そんなことしてないのに抱きしめられたみたいに安心出来て。いつも迷惑かけるのに側に居てくれる、特別な人。そう、特別な人なのだ。
溢れる涙を必死に拭いながら、あたしはそう確信した。きっと、初恋。


「多分、丸が 好きだ」

「…そっか」


そういって彼は、初めてあたしを抱きしめた。

















(多分、そういうこと)

























100930
久々丸さん!なんか切なめだけどくどくどしい感じになってしまったェ…難しいなぁ…

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