過去ログ | ナノ
「お前でも風邪引くんだな」
「何それ」
「ほら、バカは風邪引かないって言うだろ」
「バカじゃないから風邪引いたんですー」
名前が風邪を引いて学校を休んだ。あの名前がまさかと心配になって、休みを利用して来てみれば案の定。ピンピンしていて逆に風邪なのか不安になってくる。
「何で学校休んだんだよ」
「だってこんぐらいしなきゃいつまで経っても学校休めないし」
「休まなくていいんだよ」
生憎彼女の両親は仕事で不在だ。ぶっちゃけた話、もう風邪なんて心配していないが、腐っても病人である彼女に無理をさせる訳にもいかなくて、俺は今、彼女の朝ご飯を作るハメになっている。
「わーい、丸の料理なんて初めて」
「お前は布団で大人しくしてろ」
「こんな貴重な瞬間に立ち会わない訳にはいかないでしょ」
「意味が分からない」
台所側に体が向くように、イスを逆にして座っている彼女。とても1日学校を休んだ病人とは思えない様子だが(まぁどうせずる休みなんだろうが)、どうやら病院には行ったらしく、薬もしっかり用意してあった。
「お前朝薬飲んだのか?」
「・・・・」
「飲んでないのか」
「・・・・・・」
「…飲んでないんだな」
質問したのにも関わらず沈黙で返すあたりが肯定を表していた。薬の入った紙袋を見れば、いかにも、といったような錠剤と粉薬が1種類ずつ。こんなものを今更嫌がるなんて、同い年としては若干恥ずかしかった。
「飲めよこれくらい」
「丸が口移ししてくれるんだったら飲む」
「黙れ風邪引き。雑炊、作ってやらないぞ」
「うわー丸の意地悪ー」
「お前感謝って言葉知ってるか?」
誰のお陰でこんな事しなくちゃいけなくなってると思ってるんだ。冷蔵庫から出した材料を手際よく洗いながら、俺はぽつりと心の中で呟いた。多分口にしたら何かと煩いから。
少しして、静かになった彼女が気になって振り向けば、いつの間にかイスの正しい方向に座り直して、テーブルに伏せて満足げに眠っている彼女が居た。
「…呑気な風邪引きで何よりだよ、本ト」
全く、人がせっかくお前の為に料理しているというのに。そんな事を思っても実際にはこの安心しきった顔にやられている訳で。俺は何も言わずにリビングにあったブランケットを彼女の肩にかけて、あと少し余った作業を再開した。
hot sunday morning
(目覚めた頃に、また君が笑ってくれるのを密かに楽しみにしている)
100507
自分風邪で倒れたよ記念。GWに合わせてガチで風邪引きました。8度なんて出たのすげぇ久々。てか無かったかも。ビックリ。