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恋なんてバカにしてた。ましてや一目惚れなんて、古いベタな少女マンガでしか有り得ないと思ってたのに。


「守ー!」


呼ぶ声がして、隣に居る円堂が振り向くと俺も反射で声のした側を見る。視線の先では見たことのない少女が円堂に向かって大きく手を振っていた。


「おお!名前!」

「名前?」

「俺の幼なじみ。お前知らなかったっけ?」


知らない、と呟くとそうだったっけなんて朧げな記憶を探る円堂。その間にもその名前という少女はこっちに向かって走り寄って来ていた。


「やってるねぇサッカー」

「まぁな。皆気合い入ってるぞ!」

「青春だね守。素敵」

「ははは!ありがとう!」


なんだか恥ずかしい事をすんなりと声に出す彼女に、俺が話している訳でもないのに赤くなってしまう。彼女的にはそれが普通なのか、円堂が鈍感なのかは分からないが、円堂はいつもと変わらない様子で楽しそうに彼女と会話していた。


「守、そちらさんは?」

「あぁ、コイツは風丸。お前と同じく俺の幼なじみ」

「そうなの?よろしく、風丸君」

「あぁ、どうも」


なんだかテンションが円堂と似ているな、と思いながら彼女を見る。整った顔立ち。綺麗に伸びた髪。きめ細かい透き通るような肌。口角を上げたその唇は健康的で、なんだか光って見えた。“美少女”と言うに相応しい人というのはこういう人を言うんだろう。俺はそれを一瞬で理解して不意に顔が熱くなるのを感じて若干俯きながら短く返事をした。


「あたし苗字名前。守の友達。風丸君は守と同じクラス?」

「ああ」

「じゃあお隣りさんだね!たまに遊びに行くよ!」

「そう、楽しみにしてるよ」


答えるのが精一杯。顔を見ると多分何も喋れなくなる。俺は出来る限り彼女を視界に入れないようにして俯いていた。


「どうした風丸?具合悪いのか?」

「あ、いや、何でもない。気にしないでくれ」

「そうか?」


今俺に気は使わなくていいから、2人で話していてくれよ。そんな事を思うくらいならどうにかここを抜け出せばいいものを、俺の足はどうしてもそうしてくれないらしい。動こうとしない足と葛藤しながら俺は顔が赤くなるのを必死に抑えていた。


「ねえ風丸君」

「何だ?」

「下の名前、教えてくれない?あたしの事は名前でいいから」

「え?」

「だから、苗字じゃなくて、名前。嫌ならいいんだけど」

「……あぁ」


彼女の問いに思わず顔をあげると好奇心に溢れた視線がこちらを向いていた。心臓がバクバクする。ああ、落ち着け俺。何動揺してんだ。ここは普通に答えなきゃ不自然だろ。そう思考を巡らせて冷静を装うと俺は口を開いた。


「…一郎太。風丸一郎太」

「一郎太!カッコイイ名前!」


嬉しそうに名前を呼ばれると、冷静なんて言葉は吹っ飛んでいってしまって、半ば思考停止状態になる。周りに花でも舞っているような微笑みを浮かべながら彼女は笑っていた。釘付けになるようにしてそれを見ていると彼女は円堂に視線を合わせた。


「あたしそろそろ行くね、あんまり練習の邪魔出来ないから」

「ああ、また来てくれよな」

「今度はクラスに遊びに行くよ。じゃあ練習頑張って!」

「ありがとう名前」


そう言って立ち去る彼女の姿を無意識に目で追っていると、さらりと風が吹く。それとほぼ同時に、彼女は振り向いて俺を見た。


「一郎太も!頑張って!応援してる!」


楽しげに満面の笑みを浮かべて手を振る彼女。それを見ると俺の思考は完全に停止した。風に揺れる彼女の髪を不意に綺麗だと本能で感じながら、赤くなる顔を隠す脳もなく、俺はただそれに小さく手を振り返すしか出来なかった。
















(それは、自分が1番バカにしていた一目惚れだった訳で。)

























100111
あれ、このシリーズはgdgdシリーズなんて名前じゃ無かったはずだが・・・orzしにたい

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