過去ログ | ナノ
ガラガラと音を立てて扉を開く。何故か一部だけ明かりのついている教室に入ると窓際にうずくまっている彼女の姿があった。
「………苗字、?」
さっきまで大雨が降っていて、その影響で空は灰色の厚い雲に覆われている為、外からの光は殆どない。俺の声にも反応を見せない彼女を見て、俺はまた声をかけた。
「何してるんだ?もうすぐ下校時間だぞ」
「……」
「おい、苗字」
何を言っても埋めた顔を上げようとはしない彼女。俺は見兼ねて、座る彼女の目の前まで歩み寄った。近くで見ると彼女の肩は小さく震えていた。
「…苗字?どうしたんだよ?」
心配になって声をかけるが、依然変わらぬ彼女の反応。思わず肩を揺らしてみるが成されるがまま体が揺れるだけで他の反応はなかった。
「……苗字、なぁって。何かあったのか?なんでもいいから話してくれよ」
沈黙が流れる。時計の秒針が30回ほど揺れたところで彼女は観念したのか顔を上げた。その目には涙の跡、頬も擦ったのか赤くなっていた。やっぱり何かあったんだ。そう確信して俺は彼女の前にしゃがみ込んだ。
「…何があった」
「………フラれた、」
「…………あぁ、」
ふと思い付く同じクラスの男子の顔。彼と苗字が付き合っているのは有名だった。クラスだけじゃない、学年に知れ渡っていて、誰からも祝福されるような幸せなカップル。俺だって他の奴らだってそう思っていた。だから俺は彼女を諦めていたのになんてやつだ。思い浮かんだアイツの顔を脳内でぐしゃぐしゃにして彼女を再び見る。その間も彼女の目からはまた新しい涙が溢れ出していて、それを制服の裾で擦っていた。赤くなった瞼がさらに赤くなる。俺はそれを見兼ねて彼女の手を掴んだ。
「……なに、」
「もう擦るな。赤くなってるぞ」
「………ほっといて」
「それは出来ない」
「なんで」
「出来るわけないだろ、泣いてる女子目の前にして」
それも苗字だなんて。そう心の中で付け足して俺が彼女の手を放すと、諦めたように上げていた手をだらりと下ろす彼女。その目にはもう涙はない。俺は少しだけ安心した。
「……風丸は優しいね」
「そんな事ない」
「アイツも、優しかった」
「………」
「でも、嘘つきだった」
「……………そうか」
呟かれる言葉に小さく相槌を打つ。“嘘つきだった”。きっと彼女はアイツに裏切られたんだ。そう読み取るとなんだか凄くムカムカした。アイツに対してと、なんで彼女の側に居るのが俺じゃなかったんだろう。そんな思いが混ざった感情。俺だったら絶対苗字にそんな思いはさせないのに。
「どうせ男子なんて女子なら誰にでも優しいんだ」
全部あたしの思い上がり。そう吐き捨てるように口にした彼女。なんて寂しい言葉なんだろう。そう思った次の瞬間、俺の口が無意識に動いていた。
「………なぁ苗字」
「……何?」
「…俺、お前が好きだ」
「…………え」
「なぁ、一緒に帰ろう。もうすぐ先生が見回りにくる。赤くなってるの、あまりつっこまれたくないだろ」
「いや、でもっ」
「いいから。準備出来てるんだろ?ほら」
自然に差し延べられた手を握り返すか返さないか迷っている彼女の手。それがもどかしくて俺はそれを自分から掴んでいた。驚く彼女に見向きをしないようにして教室を出る。ふいに名前を呼ばれても殆ど無視をした。ほら、俺は君がこんなにも好きだけど、その感情が暴走して君の手を勝手に引いて歩いたりしてる。
《俺は優しくないんだよ。アイツと違って。》
玄関に着くと彼女は俺の手を振りほどいた。
「風丸っ」
「…なんだ?」
「あのっ、その、」
「なんだよ、はっきり言ったらどうなんだ?」
「…さっきの、本トに?」
「さっきの?」
「ほら…あの、あたしが好きだって」
「ああ、あれ。どうだろうな」
「どうだろうって」
「俺は他のヤツと違って優しくないからな。嘘かもしれないぞ」
「嘘なの、?」
「さぁな。ほら、帰るんだろ?」
振りほどかれた手を再度差し延べる。俺は出来るだけ感情を隠して、でも少しだけ優しく笑って見せた。“俺はお前が好きだよ”そんな気持ちが伝わればと思って。彼女は戸惑った表情を浮かべていたけど、少しすると困ったように笑って俺の手に自分の手を重ねた。
「風丸は、優しいね」
「…お前にだけだよ」
君にだけ、真実を紡ごう
(曇り空の中で僕らには青空《本当》が見えていた。)
100107
gdgdしていてしかも長い\(^O^)/
なんか終点を複雑にしすぎて自分でも見失った←←
とにかく昨日のリアタイDEの丸は良かった。全然関係ないんだけど^p^p^