Long | ナノ






「え!今日佐久間休み!?」

「あぁ。昨日から調子悪そうだったろ」

「そっか…」


朝のHR。いつも居る筈の佐久間が居ない為、今日は名前との2人行動となった。シュンと眉を下げる名前を見て俺は不意に佐久間の席に視線を向ける。今日は久しぶりの2人きり。胸が弾むのと同時に、寂しそうな彼女を見て複雑な心境になった。


「なんか久々だね、幸次郎と2人って」

「そうだな、今年に入ってからずっと佐久間も居たからな」


懐かしむように目を閉じる名前。俺の脳にはいろいろな思い出が巡っていた。ずっと教室の端で1人だった彼女の姿。話し掛けた時の彼女の嬉しそうな顔。それから過ごした日々。全ての記憶が彼女でいっぱいだった。そして改めて、嗚呼俺は名前の事しか考えてないな、なんて思ってしまう。まぁ実際自覚はあるから仕方ないのだが。


「あたし幸次郎に怒られた記憶しかないな」

「お前がだらし無いからいけないんだ」

「マンガ読む暇あったら勉強しろとか、授業真面目に受けろとか絵ばっか描いてるなとか」

「それはお前が遊んでばっかりだからだ」

「黙ってても煩いとかも言われたな」

「人見知りの癖に打ち解けた瞬間煩くなるからだろ」

「それだけ信頼してるって事だよ」


“信頼してる”その言葉に胸が高鳴る。しかしすぐにそれは“友達として”だという事実がその感情を否定した。重々分かっていることなのに毎回一瞬期待してしまう自分がもどかしい。机に頬杖をついていかにもつまらなそうに口を尖らす名前。久々に見る彼女の表情に、少しだけ不安が増した。


「………佐久間の事、心配か?」

「そりゃそうでしょ」


名前が大きく息をつく。今の彼女の行動1つによって俺の不安は一気に増した。その肯定の言葉は“友達として”なのか“それ以上として”なのかの判別がつかなかったからだ。俺には名前と佐久間が仲良く見えて仕方ない。それは只の友人としてではなく、なんだかもっと違う雰囲気で、しかもその中の彼女は今まで見たことがないくらい楽しそうに笑っていて、俺の胸を締め付けるものばかりなのだ。不安ばかり募る。また彼女の言葉が蘇った。



佐久間君、かっこいいなぁ



(………かっこいい、か)


俺だって名前にそのくらい言われた事がある。しかしそれは全て冗談じみたもので嘘っぽいものばかり。そんな過去がある中であんなに純粋に呟かれた彼女の言葉を聞くと、無駄に真実味が増して嫌になる。ふと彼女を見ると、その手にはあの少女マンガがあった。




………初恋かぁ




(………恋…名前が?)


思い出される彼女の言葉。あまりにも彼女と結び付かない言葉に驚いたのを鮮明に覚えている。瞬間、心臓が停止したような痛みに襲われる。もしかして名前は佐久間の事を?架空の事実が浮かび上がる。言葉と言葉、彼女の今までの佐久間に対する態度、表情、言動が全て繋がった気がして絶望が俺を襲う。否、既に知っていたのかもしれない。でも必死にそれから逃げていたのだ。彼女を見るといつも通り平然とマンガを読んでいた。その姿さえ今は残酷に見えて目を伏せたくなる。俺はそれに堪えるようにして深くため息をついた。


「…どうしたの幸次郎。最近ため息多いね」

「あ、いや…そうか?」

「うん」


これだ。彼女は変なところで勘がいい。俺の事など気にせずマンガを読んでればいいものを。


「なんか…ゴメンね。あたしと居ると疲れるでしょ」

「疲れるとか思ってたらこんなにお前と仲良くしてねぇよ、気にするな」

「うん…でも、ゴメン幸次郎」

「謝るなって」


胸が押し潰されるようだった。彼女が謝っている姿が、いつもより小さく見えて、思わず抱きしめたくなった。でもそんな事をしたらきっと俺はもう彼女の“友達”じゃいられなくなる事は知っている。
それに、名前は佐久間の事を……―――
そこで強制的に思考を止めた。それ以上考えたら多分今日俺はもたない。不安げにしながらもまたマンガに視線を戻す彼女を見て、なんだか自分がバカらしくなって苦笑してしまう。特に見た目が可愛いわけでもないし、一癖も二癖もあって扱い難い彼女。でもどうしようもなく、愛しいという気持ちが溢れだして止まらないのは何故なのだろう。何故俺はこんなにも彼女が好きなのだろう。何故俺はこんなにも辛いのだろう。そんな感情が渦を成すのを感じながら、俺は目の前の彼女をいつもと変わらない風にしながら見ていた。










   





(君が誰を好きでも、俺は君が好き)

























100117
あれww今日これ書くつもりなかったwww←
ダメだgdgdだ^p^p^源田とヒロインの話を書きたくてやけくそになってやった!反省はしている!だが後悔はしている!←どっちにしろww
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