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グラウンドの外側に目をやると、耳がキンキンするような黄色い声が上がる。練習を見ているのは別に構わないが、そうやって変に応援されてもあまり嬉しくないのは皆そうだろう。反対側を見回しても目的のアイツは居なかった。


(…今日もいないのか)


まぁ群れたがらないアイツの事だから多分まだ教室に居るんだろうが。いない事は予想済みだったのに何となく少しだけ落胆する。一緒に帰る約束をしたのだからちょっとぐらい練習を見に来たっていいものを。練習が終わるまで教室に居続けるであろう彼女の事を考えるとなんだか複雑な気持ちになった。


「源田サン、はいこれ」

「ああ…サンキュな成神」


手渡されたドリンクを飲みながらぼんやり空を見ていると、成神が不思議そうに呟いた。


「源田サン、何かありました?」

「は?何が」

「なんか珍しくぼーっとしてるから」


俺そんなにぼーとしてたか?そう問うと、はい。と平然と成神はストローで自分のドリンクを飲みながら答えた。


「なんか最近先輩ぼーっとしてますよね」

「そんなつもりはないんだが」

「俺の目をなめちゃいけませんよ」

「別にお前を疑ってる訳じゃねぇよ」

「1ヶ月前くらいからじゃないすか?なんか呆然と外野みてたりとか」

「………」



(1ヶ月前…か)



何か大きな事件などは無かったが、クラスで佐久間と話すようになったぐらい。…それが原因か?そんな訳ないよな。
成神は俺を見ながらにやけたように少し口角をあげている。なんだこいつ。無性に腹立つな。そう思いながら俺はまたドリンクに口を付けてグラウンドを見た。視界に入ったのはボールをテキトーに蹴りながらゆったりと走る佐久間の姿。
そういえば最近やたらと名前と佐久間が仲よさ気に見えるのは俺だけなんだろうか。多分今まで2人でいたから気付かなかっただけなのかもしれないが、名前が俺以外にあんなに笑って話しているのは最近あまり見た記憶がなかった。ふと佐久間がボールを高くあげてヘディングして見せると、外野の女子がまたキンキン声をあげた。





佐久間くん、かっこいいなぁ





いつかの名前の呟きが頭を過ぎって心臓の奥がわしづかみされたようなヒヤッとした感覚に陥る。名前が(リアルの世界で)あんな事をいう事なんて今まで1度も無かったのに。



もしかして…





(ダメだ。変な考え働いてる)





落ち着きを取り戻そうと目を閉じるものの、その思考は止まらない。その時また成神の声がしてそっちに振り向いた。


「……源田サン」

「…なんだ」



「…ライバルでも出来ました?」




「―――……………何の」


一瞬脳が停止した気がする。成神の問いに間を開けて答えてしまった事で、成神はニヤリと笑みを浮かべた。どうやら何か企んでいるらしい。


「何のって白々しいなぁ」

「お前言ってる意味が分かんねぇんだよ」

「恋ですよ。恋のライバル」

「――…はぁ?」

「先輩、いっつも幼なじみだっていう女子と一緒に帰ってるじゃないすか」

「…ああ、名前か」

「あの人に好きな人でも出来たんじゃないんすか?源田サン、あの人好きなんでしょ?」

「ば、バカだろお前!別にアイツはそんなんじゃ―――」





反論しようとした瞬間。休憩終了を告げるホイッスルが響く。成神は逃げるようにしてフィールドに向かって去っていった。畜生、俺だけなんかもやもやしてないといけないだろうが。
仕方がない。今は部活に集中しよう。
そう頭の中で言い聞かせるものの、そう簡単には切替が出来る筈もなく、無意識にグラウンドの外側に目をやるが、さっきの女子達となんらメンバーも変わりなく、やはり彼女の姿もない。ゴール前の定位置まで移動する間にフィールドを確認しようと視線を向けると、銀色の髪と眼帯の少年がボールを蹴りながらベンチの方を見ていた。なんだか無性に腹立たしい。これも全部成神が意味不明な事を言った所為なんだが。
どうしようもないこの苛立ちを抑えようと、俺は前髪をグシャリとかきあげた。










   





(彼女の姿がどうしようもなく恋しくなった)

























091210
ダメです恋する気持ちなど私には理解出来ませんしたことないから二次元以外^p^p^{gdpr
成神って源田の事をどう呼んでどういう風に喋るのか全く分からなかったので、こうだったらいいな的なイメージで書いちゃったYO☆
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