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今日は幸次郎も佐久間も部活で試合があるため公欠だ。のであたしは今日1日を1人で過ごさなければならない。1人の教室は慣れていた。1年の頃も幸次郎が話しかけてくれるまで1人だったのだ。
だからあの佐久間とのファーストコンタクト(?)の時にわざわざ彼に言ったのだろう。



このままじゃ誰にも話し掛けられないまま1学期終わっちまうぞ



(余計なお世話だっつの)


別にあたしだって1人になりたくてなった訳じゃない。入学の時、運悪く仲のいい友達と別々になってしまったあたし。エスカレーター式のこの学校で、新たに友達を作る事は困難である。しかもあたしの性分じゃロクに話したこともない相手に今更話しかけるなんて無理に決まっていた。その為、暇潰しに学校にまで本を持ってきては読み耽っていた訳で。その所為か元々あった“ヲタク”というレッテルがそのまま威力を増して誰も話かけてこなくなった。まぁあたしはそれでもよかったんだけど。趣味が合わない人にわざわざ話し掛けられても困るし、それじゃお互いつまらないままサヨナラって事になってしまうだろうから。それくらいなら1人の方がマシだった。それなのに幸次郎ったらわざわざ女子であるあたしの所に来て話かけて来たのだ。暇を持て余したあたし的にはよかったんだけど。


「お前、その人見知りそろそろどうにかしたらどうだ?」

「煩いなぁ、別に気使わなくていいのに」

「素直じゃないヤツ」


それは1学期の半ば。多分幸次郎の性格なら他の友達と上手くいかなかった訳ではないだろうに。それからあたし達は2人でいる事が多くなった。
あたしにとって幸次郎はいいお兄ちゃんのような存在だった。優しいし、怒ってくれるし、慰めてくれるし。本トいい人。昔からそれは寸分も変わっていたなかった。


(……2人居ないと寂しいなぁ)


マンガを読み終えてふと思い浮かんだ感情。1人には慣れていたはずなのに、やはりあれだけ長時間2人や3人で居れば慣れなんて無くなってしまうのかもしれない。そんな事を思いながらあたしは続きを読もうとさっきのマンガの次巻を開いた。



「ねぇ名前」

「……ん?」



不意に声がして顔をあげると、そこには同じクラスの女子が3人。あたしを取り囲んで微笑んでいた。


「…何?」

「今日源田君達と一緒じゃないの?」

「ああ、あの2人は部活で今日は居ないんだ」

「そーなんだー。サッカー部凄いもんねウチの学校」

「スタジアムとかお金かけすぎっていうか」

「まぁね」


こんな普通の女子と話したのはいつぶりだろう(別にあたしが普通じゃない訳じゃないんだけど)。あたしは慣れない緊張を隠すように、笑う彼女達に合わせて引き釣り笑いをしていた。
小学校時代から同じ学年を生きてきた彼女らとは、なかなか話す機会は無いものの下の名前を呼び合ってもおかしくはない仲だった。


「名前って源田君と仲いいよね」

「幼なじみなんだっけ?」

「まぁ」

「いいなーあんなカッコイイ幼なじみいて!」

「そう?お母さんみたいなやつだけど」

「いいじゃんウチらそんな仲いい男子居ないよ」


(男子って、男も女も関係ないだろ)


たまたま昔から知り合いだったのが幸次郎ってだけであって、それがもし女子でもあたしの対応が変わるわけでもないのに。さも“羨ましい”といっている視線であたしを見てくる彼女らにあたしは苦笑するしかなかった。


「最近佐久間君とも仲よさそうにしてるよね」

「ああ、佐久間は幸次郎と同じ部活だったからその関係で」

(眼帯気になっただけなんて言えない)

「いいなー、イケメン2人も仲良くて」

「佐久間君ってなんか話し掛けずらいもんね」

「でも名前とは楽しそうに話してて最初ビックリしちゃったよ」

「なんか流石ってカンジだよねー―――」



(ダメだ…訳わかんなくなってきた)



現代の女の子っていうのはこんなにも訳の分からない話をこんなに高速で展開させる事が出来るのか(あたしが現代っ子じゃない訳じゃないんだけど)…日常的にこんな事をして平気だなんて、あたしには理解出来ない。既にあたしとは違う世界に入り込んでしまった彼女達から逃げるようにしてあたしは席を立った。


「ごめん、ちょっと…」

「あっゴメンね名前ー。話付き合わせちゃって」

「(既に付き合っているつもりは無かったんですけど)」

「久々に話せてよかったよー」


アハハ、と愛想笑いを返しながら、あたしはマンガを持って教室を出た。授業まであと5分。廊下には疎らに人がいた。この分じゃ必死に隠さなくてもこのマンガが先生にばれる事はないだろう(いつでも必死な訳じゃないけど)。あたしは少しも隠すことなくそのマンガを持って階段を上がった。屋上に続く階段。それを駆け上がって扉を開けると白い雲が程よく残された青空が広がっていた。



「サッカー日和じゃん」



ふとそう呟くと扉を閉めて中央に進む。んー、と伸びをして大きく深呼吸するとさっきまでの窮屈さなど無かったように晴々とした気分になった。


「…このままサボっちゃえ」


元々その為に来たのだけれど。今日は成績がああだとか先生がこうとか言うヤツは居ない。「保健室に行ってた」とか言えばいいだろう。
―――…まぁ何も言わなきゃバレない事なんだけど。
あたしは幸次郎になんでも話してしまう癖があるらしい。多分ずっとアイツしか話し相手が居なかったからその反動だろう。チャイムが響く。ページをめくっていた手を止めてまた空を見ると、また新しい雲があたしの上を通り過ぎていた。










   





(頑張れよ、あたしも。アンタらも)

























100102
不覚にもデータ吹っ飛ばして打ち直したっていうwwwwめんどくさかったwwww
ヒロインが基本ボケなので源田とかツッコミ役が居ないと1人ツッコミせざるを得なくなるウチのヒロイン^p^
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