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「佐久間君って同じクラスだったんだ」

「…知らなかったのかよ」

「うん」


戸惑いも躊躇いもなく平然と答える辺り、普段あまり周りを見ようとはしない彼女からすれば、当たり前の事なのだろう。まず人と関わりを持とうとしないインドア派である彼女。いつからこんなことになったんだっけな。源田はふぅ、と名前にばれないように息をついた。





「……話しかけて見ようかな」





「―――――………は?」

「…めっちゃ間」

「いや、驚きのあまり」


名前の口から出た、佐久間への初コンタクトをほのめかす言葉に源田は目を丸くした。あの人嫌いの名前が、あんな厳つい眼帯の佐久間に、“話しかけてみようかな”?考えれば考える程信じられないという視線を彼女に送る源田。それに気づくと、名前はむすっと頬を膨らませた。


「…何、話しかけちゃいけないの」

「……ご自由に?」


出来るものなら。と源田が付け加えると、名前はふと佐久間を見た。何処か普通とは違う、人を寄せ付けない、寧ろ追い払うようなオーラを纏った佐久間。少し前の席に頬杖をついて座っていた。





「―――…………無理だ」

「だろ?」



普通の女子、というか男子さえも話しかけ辛い彼のオーラを見て、名前は硬直しながら呟いた。無謀だったな、と源田が名前の肩に手を置くと、名前は名残惜しそうに源田に視線を送る。ふとそれに気付くと源田は眉をひそめた。


「俺頼み?」

「それしかない」

「お前なんでアイツにそんな積極的なの」

「眼帯好き」

「そこか」


上手く上目使いをして源田に視線で訴える名前。源田はそれに滅法弱かった。はぁ、と息をつき席を立つと、佐久間の席に向かい歩み出した。その源田を追いながら、名前はガッツポーズを決めている。源田はそれを冷たい目で見て彼女の頭を軽く叩くと、名前は「痛っ」と小さく声をあげた。





「佐久間」

「……源田」


源田の声に振り向く佐久間。源田は呆れたような表情をしながら佐久間を見ていた。その後ろに隠れるようにして、名前は小動物のように源田にくっついていた。


「お前1人で寂しくないのか?」

「…別に」

「もっと愛想よくしといた方いいぞ。この分じゃ誰にも話かけられないまま1学期終わっちまう」

「……お前こそ、その後ろに隠れてるヤツ以外と話してないんじゃないのかよ?」

「…まぁな」


苦笑する源田に、名前は複雑な心境で視線を送っている。ほら、と親のようにくっついていた彼女を引きはがすと、源田はまた口を開いた。


「こいつ、苗字名前。俺の幼なじみのバカ。お前に話しかけたいって言って聞かなかった」

「バカ幸!そんな事言わなくていいっつの!!」


反論の声に佐久間が視線を向けると、それに気付いて「あ、ども…」なんて呟く名前。佐久間もそれに返して小さく会釈した。


「苗字です…」

「お前は本トに人見知り激しいな」

「煩いバカ幸。黙っとけ!」


きー、と威嚇するように名前が源田を見ると、源田は はいはい、と呆れたように呟いた。


「えっと…佐久間君――」

「…佐久間でいい」

「ほ?」

「呼び捨てでいいから。クラスメイトだろ」

「…………」


いきなり告げられた言葉に思わず口を開けたまま固まってしまった名前。源田がいきなり黙った名前をふいに見ると、また呆れた顔をしながら彼女の肩を少しだけ力を入れて叩いてやる。


「おい、名前」

「…あ、時が止まっていた…」

「もっと対人に慣れようなお前」

「………うむ」


返事は「はい」だろ。と親のような事を言われてすっかり拗ねてしまった名前を見ながら、佐久間は呆然としていた。少ししてからプッと吹き出したかと思うと、笑い転げ始める佐久間。源田は驚いたようにそれを見る。


「……佐久間が笑った」

「お前ら、親子かよっマジウケる」

「……………佐久間がこれしきで笑った」

「これしきってお前失礼なっ」


困惑する源田を尻目にアハハと笑い続ける佐久間。それを目撃した名前は驚きのあまりまた固まってしまっていた。


「…まずは笑わすことから始めようと思ってたのに」

「それマジかよ」


お前の様子から見てたらそんな事一生出来なかったろうにな。佐久間がこんな事で笑わない限り。そう思っているのは彼女には秘密だ。笑い続ける佐久間を見てお互いに顔を見合わせる名前と源田。そんな自分達の姿と佐久間の笑い声に思わず笑みが零れるのであった。










   





(佐久間が仲間に加わった!▼)


























091206
ああ…やっと…やっと普通にさっくんと話せる時代がやってきたよ…!←
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