Long | ナノ






気だるい空気が満ちた体育館。今日は男女別れての授業だが、どうやら男子はフリータイムのようで、各々バスケットボールやドッチボールやら、好きな事をしていてもはや休み時間である。
その中で特に何をするわけでもなく、ただ壁に寄り掛かっている源田と佐久間は、お互いに好きなように視線を走らせながら会話を繰り広げていた。


「お前さ」

「…何」

「―――…あの手紙どうした?」

「あぁ…」


手紙とは先日名前が頼まれた“佐久間宛て”のものの事。源田はあの日の名前の様子を見てずっと気になっていたのだ。曖昧に相槌を打つ佐久間だったが、源田の声色からして言い逃れは出来ないことを知る。しかし、お互いに視線を合わせる事はせず、変わらず体育館内の内容を眺めているだけだった。


「断った」


それが当たり前のように何の躊躇いもなく告げる佐久間。


(あぁ、やっぱり)


予想内だった返答に源田は心の中で小さく呟いた。佐久間の言葉は彼らにとって決定的な亀裂を作り出す。
“コイツは名前が好き”
お互いに共通する意識。だがしかし、この思考は決して分かり合えるものではなかった。


「なんでまた」

「わざわざ聞くのか?」

「形式的なもんだ」


張り詰めた空気。名前の前では絶対に有り得ない殺気に満ちた気配。騒がしい体育館の中で隣同士に座った2人は、本人達しか分からないオーラを発していた。


「他に好きなヤツ居るし、手紙貰ったからってイコール付き合うじゃないだろ」

「でも名前はお前とその子が付き合ってるって思い込んでるぞ」


源田の言葉にあからさまな反応を見せる佐久間。眉をひそめながら、ここで初めて彼は源田に視線を向けた。不機嫌そうな佐久間の表情を気にするそぶりも見せず、源田は相変わらず好きなように視線を動かしていた。


「お前が何か吹き込んだのか」

「まさか。佐久間には彼女が出来たから諦めて俺にしろとでも言えってのか?」


押し黙る佐久間に、源田は少しだけ口角を上げた。
ある意味、先程の源田の発言は“名前が佐久間の事が好きだ”という事を半ば肯定したようなものだ。鈍感ではない佐久間が不信感を抱くには十分な言動。余裕に満ちた源田の表情にさらに神経を逆なでされながらも、彼は源田から視線を外した。


「お前はそれでいいのかよ」

「別に。作戦がない訳じゃないしな」

「…どういう事だ」

「仮に名前がお前の事が好きでも、俺はそれを覆させればいい話だろ」

「それが上手く行かなくてここまで来たんじゃないのか」


核心を突かれる源田。しかし動揺した表情は全くもって無く、逆に佐久間を嘲笑うように苦笑しながら呟いた。


「アイツはやっと現実を見始めたんだ。俺にだって勝ち目はある」


永遠に来ないチャンスだと思っていたのに、まさかこんな状態で望んでいた機会に巡り会うとは。名前の姿を見続けて来た源田に取っては複雑な心境だったが、今は思い悩んでいる暇は無かった。今すぐにでも、彼女を佐久間から引き離さなければ、自分の今までの想いが水の泡になってしまう。源田は今までにない不安を抱えながらも、それに勝る自信に満ちていた。


「それもこれも、お前のおかげだな」

「感謝されてる気がしない」

「厭味に聞こえれば幸いだ」


ギリ、と唇を噛みながら佐久間は視線を向けずに源田を睨む。果てしなく強気の源田に、佐久間の怒りは頂点に達した。それとほぼ同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。


「よし、戻るか」

「………俺さ」


教師の話も半ば無視でぞろぞろと教室に戻ろうとする生徒の群れに紛れ込もうと立ち上がった源田を引き止めるように、佐久間は間を空けて口を開いた。何事も無かったように振る舞いながら振り返る源田。それに流されまいと佐久間は源田を恨めしそうに睨みながら立ち上がって低く告げた。



「お前の事応援する気ないから」










   





(奇遇だな、俺もそう思ってた所だ)

























100630

源田が厨二過ぎる^p^怖いこいつら
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -