ちゃぷり、と溜まった水が風で跳ねる。
ゆるやかで少しだけ暑さを含んだ風が吹く。
それらが7月を告げる頃、プール開きは始まった。


「お前ら、本当にすまないと思ってる…」
「どういうことですか。」


ざん、という音を立ててプールサイドに水が流れた。
自然に排水溝流れていく塩素臭を誰も気にする事無く、福田の話は続けられる。


「というわけで、泳げる女性教員が真城先生しかいなかったので、女子担当は真城先生に決まった。男子諸君、本当に申し訳な…ごふっ!!」
「少し黙っていただけますか?」


にこっ、という底の知れない満面の笑みを浮べる真城。
その拳は福田の腹部にめり込んだ。

かなりいい音をして入った真城のボディーブローは福田の腹部にまさに「入った」らしい。
福田は防ぐ余地もなく、プールサイドに倒れこんだ。



「はーい!じゃあ、女子はこっち集まってー!」


はーい、とぞろぞろと真城に続く女子に対し、男子はうわぁ、と福田に哀れみをこめた声を投げた。

そうして、本当に大丈夫かな、と数人が福田の身体をつつく。
完全にダウンした福田の姿にうろたえる男子。

すると、福田をダウンさせた張本人がくるりと振り返り、これまたにこり、と笑った。


「すぐ亜豆先生来るから大丈夫だよ」


香耶先生と一緒に。
と倒置法のように言葉を繋げた真城。

ほっ、としたのもつかの間だった。


「女子にそういう発言したら、ああなるから、気をつけてね?」


真城の言葉に思わず震え上がる男子。
なおも真城は笑みを深めて、女子の定位置に戻っていった。

遠くからきゃっきゃっ、と話しをする女の声が二つ。
段々と近づいていく声に、男子は「福田先生のようなセクハラは一生しない」と誓ったのだった。



「先生やっるー!」
「うんうん、毎年困ってたんだぁ」
「だと思ったのよ」
「あたしが来たからにはもう安心して!」
「みんな若くてかわいいんだから、あまり変態には近寄っちゃダメだからね?」


はーい、という若くてはじけた声がプールに響いた。









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高校でプール男女一緒ってさすがにないんですかね?
私の高校はプール授業なかったのでわからないんですけど…

2012/02/04