「美術担当の真城最高です。よろしくお願いします。」


よろしくお願いします、とぽつりぽつりと返される。そうして、一通り昨年から引き続きいる先生と新しく来た先生の紹介を終えたところでこの会議は終了した。


ふぅ、と一息ついた高木秋人は、自分の隣の机を見やる。

隣の席の真城は配られたプリントに興味がないようで、文字が羅列したプリントに少しだけ視線を滑らせただけで、机の上に放り投げた。

いいのか、と新任ながらに突っ込みたくなる衝動を抑えて、次にどう動くのかと観察を続ける。何をするべきか分からないのだ。

そんな風に見つめているうちに真城の視線がこちらへと動く。
しまった、と思った時には遅かった。どうかしましたか、と首を傾げる真城に、いや、とどもる。
が、どうせ自分が補佐すべき1年2組の担任の方なのだから、と意を決して話しかける。


「もりたか、って名前なんですね」
「あぁ、女なのに変ですよね、もりたか、なんて。」
「いえ、サイコーかと思ってましたので…」


気遣いのつもりでもなんでもなく、本心でずっと思っていた事を口にする。
本当についさっきまで、サイコーだと思いこんでいたのだ。
国語教師として恥ずかしい限りだ、と苦笑して真城先生を見やる。

そんな当の本人はパチパチとまばたきを繰り返して、きょとんとしていた。

いつまたっても口を開かない真城の様子に、不味いことを言ったかも知れない、と不安に駆られた高木。真城先生、とおずおずと声をかける。


「ぷっ…」
「へ?」
「あははっ!そんなこと初めて言われた!」
「ま、真城先生?」
「よく女の子なのに、とかは言われるんだけど…それはなかった!」


ナイス!と親指を立てながら、笑いを堪える事をしない真城は職員室の注目を集めてしまう。


「どうしたの、真城先生?」
「あ、亜豆さん。久しぶり。」
「ここでは先生よ、真城さん。」


見かねた亜豆が真城と高木のもとへと歩み寄る。
が、新たな問題が浮上した。


「久しぶりって?」
「僕、亜豆先生と香耶先生と高校の同級生なんです。」


初耳なんですが。
と高木は自分の妻である、高木先生、否、香耶先生に視線を送った。


「言うの忘れてた!
というかタイミングがなかったの!」


という元気な返事を返す自らの妻に、少なからずの頭痛を覚えた秋人だった。
「…香耶がお世話になっております。亜豆先生、サイコー先生。」
「こちらこそ、シュージン先生。」










‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3人は高校で仲良しで、大学は別々だった設定。秋人だけ別の高校。
4人とも同い年だけど、高木夫妻は大学院に行ったけど辞めて教師になったので、24歳にして新任です。(細かいわ

11/02/21