部活中、暇で暇で仕方のない真城は、部員全員を勝手にスケッチしたり、使う予定もない図案を独りでに考えてはスケッチブックに描きためたり、1人で押し花を作ってみたりと、ちょっと寂しい人間と化していた。

その結果が、真城の前に広がる残骸、と言うには勿体無いものたちだった。


「どうしよ、これ…」


ところどころ、押し花が挟まれっぱなしのスケッチブックが10冊。
ほんの数ヶ月でここまで描きためた事のない真城は内心、自分自身にビビッていた。


押し花と言えば栞だが、それほどまでに真城は読書をする方ではなかった。
否、読書をしないと言えば嘘になるが、真城の読書と言えば、大概がマンガだった。


「………あっ」


だが、先ほどまで悩んでいた真城は何かを思い出したように、自分が使うわけでもない栞をそそくさと作成し始めたのだった。







真城が足を運んだのは、図書室だった。勿論、真城が用のあるのは、本なんかではない。


「差し上げます。」
「…これは?」


岩瀬、である。
岩瀬はいきなりやってきた真城を気にも留めなかったが、いつもとは違う行動を示す真城に、少しばかり反応が遅れた。

栞です、と即答する真城に、それは分かります、と岩瀬も即答。


「たまに栞代わりに使う紐がついてない小説があって困ってるじゃないですか。」
「確かに…。」
「なので、僕から岩瀬先生に差し上げます。」


図書室にはお世話になってるので、と再度、栞を岩瀬に差し出す。
少し戸惑いながらも、岩瀬は真城から栞を受け取った。

四つ葉のクローバーをメインに、センス良く飾られた清楚な愛らしさを醸し出す栞。
それは岩瀬の為にと真城が考えたもので、少なからず胸が暖かくなった岩瀬だった。



「…ありがとう。今度、国宝絵巻鳥獣戯画を入れておいてあげる。」
「本当に!?じゃあ、カーサ・バラガンも!?」
「それは別です。」













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ある種、真城先生が美術部で一番可哀想です。(お前
そして、カーサ・バラガンが気になっているのは紛いもなく私の方です。←

11/03/05