「へいおまち!」


すっかり打ち解けた真城と新妻。お互いに独身という事もあり、2人でご飯に出掛ける事も多くなった。
勿論、同僚として。



「ご飯粒ついてますよ」
「ふみまひぇん」


新妻の頬についたご飯粒をひょいと拾い、そのまま口へと運ぶ真城。
いいえ、と返事をしながら、自分も割り箸を割る。
炒飯も良かったかも、と思ったりもしたが、自分の味噌ラーメンを食べているうちにそんな事は忘れてしまった。


どうしたものか、新妻はご飯を上手に食べることができないらしい。常にボロボロと零してしまうのだ。

仕方ない人だなぁ、と妥協してしまう真城も真城だが、そうさせているのは紛いもなく新妻本人だ。

福田や高木がこうならば注意したかも知れないが、新妻にはどうしても注意できないのだ。
無邪気だから故なのか、単なる遠慮からなのか。それは真城本人にもよく分からなかった。



「900円です。」


割り勘ですよね、と財布をあさりながら確認を取る新妻。はい、と返事をした真城。

違和感に気付いたのは真城が先だった。


「あれ?2人分にしたら安くないですか?」


確か、炒飯もラーメンも500円以上していたはずだ。
なぜ、と思いながらも、間違いであるなら大変だ、とつい見ず知らずの店員に指摘をしてしまった。



「あら?ご存知なかったですか?」
「何がです?」


指摘した点がさも間違いではないのだと言うかのように、店員のおばさんは人が良さそうに微笑んだ。


「この店、学生さんには半額なのよ。勉強頑張ってね。」


先に新妻から受け取った900円をレジにしまいながら、とんでもない事を口にする。
それも、とても良い笑顔で。


「カップルかしら?
あまり羽目を外さないようにね!」
「気をつけます!」


せめてそこは否定しようよ、と思いながらも、こんな良い人に自分から、違います、と言えるはずもなく。色々と間違えられたショックから、何も言えなくなった真城だった。






「元気出してください。真城先生。」
「今は先生って言葉が一番痛いです。エイジ先生。」



幼く見られたショックから半泣き状態の真城に比べ、なんだか嬉しそうな新妻がそこにいた。



「何で嬉しそうなんです?」
「真城先生には内緒です!」










‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
真城もエイジも年齢より若く見られそうだな、と。
というか、2人でラーメン屋に行かせたかっただけです。←

11/03/01