自分の目の前で何かが崩れたように泣き出した少女。
声を漏らさないようにと、身体を小さく震わせて泣く。

道の真ん中だという事まで忘れたのか、しゃがみこんで丸くなった背中が妙に小さく見えて痛々しかった。


「…うっ、ひくっ…」


嗚咽と一緒に跳ねる背中を労るように撫でてやる。
衰弱したように細く、今にも折れそうなそれに、驚いて手を離しかけたけど、決して離してやるもんかと踏みとどまる。

雨に体温を奪われているのか、服越しに伝わる背中の温度もどことなく冷たい。
心配だし、色々と聞きたいとねだる自分を押さえつけて、黙ってひたすら背中をさする。


「…はっ、とりさん」


泣いているせいか、呂律も回らないまま。そんな力の入らない状態でも、俺の持った傘ごと俺をどかそうとする。
見ないで欲しいのか、自分が嫌いなのか、1人にしてほしいのか。どれだろうかと考えてみるも、答えが出るはずがなかった。それに、そんな事はどうでも良かった。


少しだけ震えた力で押し返す彼女の手。愛しいとかそんな事を考えている自分が恥ずかしい。
ただ、そんな事を考えている余裕なんて俺にもなくて。

そんな愛しい彼女の手を両手で握りしめる。




「服部、さん…?」
「こっちにおいで」



俺は彼女の為ならなんでもするけど、決めるのはいつだって彼女自身だ。







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