「…どうして僕まで怒られなきゃならかったのか、わかっていますか?」
にこりと笑みを浮べながらも、顔に浮かぶ青筋。 仁王立ちがこれほどまでに似合う人を見た事があるだろうか。 そう思えてくるほどに、真城の仁王立ちは様になっていた。 というか、修羅のようだった。
風雲児で有名な福田も、破天荒で有名な新妻もこればかりは震え上がるように、自然と正座に座りなおし始めた。
それくらいに真城は怒っていた。
軽い下心で始めた事がこんな展開になるとは思いもよらなかった2人は、数時間前の自分を密かに呪ったのだった。
「福田さん?どうしてですか?」 「…オレらが寝たからです。」 「ぬるい!!」
ビクッ、と跳ねる福田の肩。 背筋を伸ばし、おずおずと答えを請う福田の姿は、さながら母親から説教を食らう小学生のようだった。
何も分かっていない、と真城は大きな溜息を吐く。 その真城の挙動1つ1つにビクビクとする新妻の姿を目の端に捉えた真城。
「新妻さん、分かってますよね?」 「…よ、涎垂らしたからですか?」 「ちっがーう!!」
怒鳴られた猫のように、全身の毛を逆撫でて驚く新妻。 今にもにゃーと鳴き出しそうな新妻の挙動は、少し愛らしいものがあったが、今の真城にそれを感じ取るほどの余裕は持ち合わせていなかった。
もう、とまたもや聞かせるように大きな溜息を2人に吐く。 その挙動におずおずとする2人の姿にバレないように苦笑して、真城は言葉を続けた。
「何故、僕が巻き添えを食らったのか、を聞いてるんです。」
何故、といわれても真城の両隣を福田と新妻が陣取って寝ていたからに他ならない。 だが、真城は困らされた分、困らせてやろうと最初から決めていたのだ。
「2人とも、分かってませんよね?」
にこり、と笑みを深めた真城はさながら母親のようでもあった。 だが、その心中は2人を存分に困らせたい、という好奇心だけなのである。
「「…………」」
何故、真城の両隣を陣取ったのか。 何故、真城の両肩を借りて寝たのか。
何故、と聞かれれば答えは決まっているのが2人の共通点であった。
「「そんなの、真城先生が好きだからに決まってる!!」」
長い沈黙の後、ばかだ、と誰かが呟いた。 我に返り、その勢いと目の真剣さに押された真城は、つい小さな笑みを浮かべてしまう。 本人達は、真城の機嫌を直したい一心での行動なため、自分の言ったことすら何も気付いていないようだった。
そんな2人の姿に怒っているのもバカらしくなり、真城は毒を吐き出すように大きな息を吐いて、もういいです、と説教を終わらせた。
「ゆるしてくれんの!?」 「真城先生、優しいです!」
はいはい、と呆れたように受け流す真城と、心底嬉しそうな2人。 子供みたいな人だな、と真城は良い意味でも悪い意味でも思った。
「もう許します。ただ…」
ただ、急に2人に素直になるのはばかられたらしく、どこか強気な物言いで2人に命令をする真城の姿がそこにはあった。
「新妻先生には、今度ご飯奢ってもらいますからね!」 「あいあいさー!」 「福田さんは画材買いに行くときの荷物持ちですからね!」 「了解!」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ rise様に捧げます。 真城先生にイタズラをさせて2人を懲らしめるはずが、いつの間にやら2人にデート権を与えてしまいました…。 正直言って先生らしからぬおバカな発言だったとは思いますが、愛嬌として受け取っていただければ幸いです。笑
2012/02/06
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