「お風呂沸くまでちょっと待っててね。」 「えっ!そこまでしてもらわなくて結構です!」 「いいの。」
きっぱりと真城の遠慮を断る。そして、俺がしたくてしてるんだから、と少し嬉しそうな顔をして真城に告げた。 そんな雄二郎の姿に断る理由が見当たらなくなった真城は、折れる形で雄二郎に従うほかなかった。
「――――ありがとうございました。」
風呂場からほんの数分で出てきた真城。あまりにも入浴時間が短すぎて驚いた。
「寒くない?」
こくり、と頷く真城。 すまなそうな顔こそしているが、恥ずかしそうに上気した顔をバスタオルで隠している。そんな所を見ると、ひとまずは大丈夫そうだと雄二郎は安堵した。
泣きはらした目の腫れはまだ治りそうにない。そう思うといたたまれなかった。自分が泣かせたわけでもないのに。
「真城さん、」 「服部さん…?」
戸惑ったような声が胸元で響く。 くぐもった声と、自分と同じ匂いがする暖かい身体。
そんな真城にかすかにくらり、となりながらも抱きしめる。 行き場を探すようにそろりと背中に回された腕に愛しさが募る。 けれども、何かを思い出したように、手を離されてしまう。
「逃げないで」
ぴくり、と真城の身体が固まる。その様子を感じ取り、そんな真城の姿にもどかしさにも似た悔しさを感じる。
「自分から逃げたら、逃げられちゃうんだよ。」
どこか脅しにも聞こえるような言葉をかけて、腕の力を強める。 逃げないよう、逃げられないよう。
「だから、逃げないよう捕まえておけば良いんだよ。」
にこりと笑いかけ、まだ少しだけ上気している頬に右手で触れる。 そんな姿に安心したような表情を浮かべて、肩を撫で下ろした真城。
「そんなこと、分かってるつもりです。」
そう言って目を逸らす。 背中にある腕の迷いが消えた。きゅっ、と服部が着ているTシャツに皺が刻まれる。
「俺は逃げないよ。」
きっとこれが真城にとっての精一杯の「縋る」なのだろう。そう思うとひどく愛しく感じた。
そして、服部は真城に1つだけキスを贈る。
「…分かってます。」
満足げに微笑みかける服部に向かって、恥ずかしそうに真城は目を逸らしてそう言ったそうな。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 雄二郎、お前天然タラシみたいじゃねぇか… mi君さまの追加リクエストに「よしきた!」と勢いだけで書きました。こんな感じでよろしかったでしょうか…?
11/03/19
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