「ふ…む、」
「ん、はっ」

穏やかな水面の上に浮かぶ船の一室で男女が唇を交える。重なっては離れ重なっては離れを繰り返し、時には啄むようにお互いを求め合った。口内から覗く赤い舌が疼く体を更に煽り、首に回した手は熱を持って欲情する。

クチュクチュと舌と舌を絡め、唾液をも飲み込み激しく口内を犯される。それが酷く気持ちがよくて、直接秘部に触れられているようだった。徐々に昂ぶっていく感情を押し付けるように一層体を密着させれば、エースの下腹部で大きさを主張するように反り立つそれが分かる。

脳内が白くぼやけていくのと一緒に体から力が抜けていき、とうとう唇が離れた瞬間膝から落ちた。しかし彼はそれを分かっていたかのように両腕であたしを支え、クッと小さく笑いを零す。それがとても癪に障ったので睨みつけた。

だがそれは彼の加虐心をより刺激するだけで、あたしは不利になる一方。そのまま後ろに手を回され、スプリングが軋むと共にあたしの体がベッドにゆっくりと沈む。そうして先ほどの行為の続きが行われ、今度はどこからもそのキスのシャワーから逃れられぬ状況となってしまった。

ところがあたしはそれほどその行為が厭ではなく、逆にこの態勢が激情させてくれるのだから意外とマゾヒズムなのかもしれない。頭の片隅にこんなバカみたいなやり取りを望んでいる自分がいるのだから、サディズムな彼とお似合いだ。

今度はその唇が口から首へと移動し、そのまま鎖骨へと下がり峡間へと迫る。右手が乳房をやわやわと揉みしだき、左手は体の曲線をゆったりと愛撫する。我慢できずに詰まった息が口から漏れ、嬌声が出るとまた唇を塞がれた。今度は先ほどの獰猛な獣のように荒いものではなく、ことさらゆっくりと歯列や頬の内側を舌でなぞられる。ゾクゾクとしたものが背中を駆け上り、潤んだ視界の中ギラギラと瞳を光らせたエースと目が合う。その瞳に射られるだけであたしは頂点に達しそうだ。

性衝動に忠実に体を交わし、愛を刻む様はそこらの人間と変わらぬただの動物のよう。
嗚呼なんて醜く美しき本能かな。





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20101222
欲求不満か自分。

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