うちの高校は屋上を開放していない上に使わなくなった体育用具の倉庫代わりに使っている為、全くと言っていい程人気が無い。それに放課後も重なっている為、1人なるには丁度良い場所だ。あたしは体育用具のうちの1つであるマットの上に腰を下ろす。今日は風がある為、時折扉がカタカタと揺れていた。

あたしは鞄とは別に持ってきた紙袋の中から、自分なりに頑張って作った榛名への誕生日プレゼントを取り出す。気合い入れて張り切って作った小さいホールのチョコレートケーキだ。柄にもなくメッセージプレートに榛名誕生日おめでとうと書いており、その回りには苺を飾ってある。うん、気合い入れすぎた。入れすぎだあたし。イタイにも程がある。何で作ってる最中に気付かなかったんだろう。自分の莫迦さ加減にほとほと呆れてしまう。

溜め息を吐きながら、ケーキボックスの取っ手に結んでいた紅いリボンをほどいた。そしてボックスの開け口に手を掛け、そっと優しく丁寧に中身を取り出す。状態は今朝とは変わらず、しかし今では寂しく存在を主張しているバースデーケーキ。あたしは自然と浮かんでくる泪を耐えながら、人指し指でチョコレートホイップを掬って口に含んだ。

「…甘い」

榛名は甘いもの駄目なのに、とか少し砂糖が多かったのかな、とかチョコレートはもっとビターなのにすれば良かったのかな、とか思っているうちに、とうとう瞳から泪が一滴零れた。


本当に莫迦だなあ、あたし。


自分のちっぽけなプライドが、気の強い性格が、今では憎たらしくて堪らない。一度零れた泪は留まることを知らず、堰を切ったようにぼろぼろと零れ、制服のスカートにシミを作っていく。










「こんな所に居たのかよ」









この場に似つかわしくない、あまりの突然の声に驚き声のした方に勢いよく顔をあげる。そこには息を切らせて肩を上下させている榛名が居た。

「…何で」
「まだお前からプレゼント貰ってねーからよ」
「…どうして」
「お前が好きだからだよ。ワリーか」

あたしの舌足らずな質問に正確に答える榛名。思わぬ告白に泪が止まる。

「なに、言ってんの」
「別に、ただの告白」
「アンタねえ…」

ムードもへったくれもない。でもそこが榛名らしくて笑みが零れた。泪はいつの間にか止まっていて、あああたしって本当に榛名が好きなんだなあと柄にもなく思う。

「んで、プレゼントは」
「…ちょっと食べちゃったけど、」
「お、ケーキじゃん。うまそー」

そう言いながら近付いてくる榛名に、きっと醜いであろう顔に気付いたあたしは、慌てて目元を拭った。しかしそれが彼の癪に障ってしまったらしく、途端に機嫌の悪い顔となり拭っていた右腕を掴まれる。左腕はケーキを持っているので、何も出来ない状態になってしまった。

「…な、なに。どうしたの」
「目ぇ腫れるだろうが」
「だ、だって恥ずかし…っ!」

一瞬、何をされたか分からなかった。でも、だんだん顔から離れていく榛名に、何をされたか理解する。
こいつ、瞼にキスしやがった…!

「な、な、なっ!」
「ぶ、顔すっげー赤くなってんの」
「あ、アンタねえ…!」

慌てるあたしと違い、余裕な榛名に苛つきを感じる。しかし榛名はあたしの右腕を掴んだまま、左手に持っているケーキにそのままかぶりついた。またもや驚くあたしに当の本人は、うめーけど甘いとかなんとか場違いな発言をする。そうだった、こいつはいつも自分勝手に相手を省みず空気を読まない俺様だった。

そして、口回りについたクリームを舌で器用に舐め取った榛名は、そのままあたしに顔を近付けた。





触れた唇は、
(甘い甘いチョコレート味)





(…)
(お、耳まで真っ赤)
(う、うるさい!)
((やべーかわいい…))


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090524(+加筆修正090616)
誕生日祝い第二段Part1

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