「はぁ」
「何でかいため息ついてんだよ」

誰のせいで溜め息が出たと思っているのかと問い詰めたくなる衝動を理性と闘い、必死に抑え込む。その代わり少しばかりの反抗として眼光を鋭く刺し、睨み付けた。

今日は5月22日金曜日放課後のHR手前。うちの学校は公立なので土曜・日曜に登校する者はいない。いるとしても部活動がある生徒だ。生憎と部活に入っておらずバイト漬けなあたしには全く縁の無い話である。が、今年ばかりはそうはいかなそうなのだ。横にいる男によって。

「別に榛名には関係ないよ。ほっといて」
「人が親切に聞いてやったのに何だその態度は」

どこが親切なんだ偉そうなくせにと言う前に、榛名が言葉を発したと同時に額に鋭い痛みを感じる。デコピンされた、痛みによって自然と額に触れた手の感触によって気付く。

「ちょっと痛いじゃん。何すんの」
「お前がそんな態度とるからだろ」

んな理不尽な、とまた言いそうになるのを押さ込む。最近の榛名はいちいちあたしの言動一つ一つに煩いので今みたいに気を遣わなくてはいけない。

そもそもあたしと榛名は一年の頃からのクラスメートだ。お互いに良き友人として付き合っている。榛名の恋愛相談にものったことがあった。見事に失恋したらしいけど、詳しい詳細は知らない。

「それにしても榛名、アンタの今日の荷物は凄まじいね」
「…ホントにな」
「紙袋あるけどいる?」
「ん、助かる」

そう、明後日は榛名の誕生日だ。去年の誕生日はまだ人気も少なかったし有名でもなかった上に、それ程活躍もしてなかったのでプレゼントを山のように机の中や上やロッカーの中から溢れさせている榛名を見るのは初めてである。いや、3ヶ月前のバレンタインでも見たかもしれない。
そして去年のあたしは今現在よりも交流が少なかったので、誕生日だと気付いたのは数日後の話だった。だからこそ今年は誕生日プレゼントをあげたかったのだが、いざあげようと思ってもこんな状態を見れば、あげる気も失せる。

誕生日は明後日だから、ホントはあたしも今日あげたかったのだ。何故なら今日あげれば特に変に思われることがないからである。もし明後日わざわざ部活中に渡しに行ってみろ、絶対に不審に思うに違いない。あたしが榛名を好きだと絶対に気付かれてはいけないのだ。

「ったく、こんなにいらねーつの」
「いーじゃん、別に。アンタに恋するかんわいー女の子達が用意したんだから。悪い気はしないでしょ?」
「…まぁなー」

あげた数枚の紙袋(たまたま鞄に入ってた)にプレゼントを詰め込みながら、ほんの少しだけ頬を緩ませた榛名に気付かないあたしではない。それに少しだけ心臓の近くがズキンと痛む。が、あたしは気付かない振りをした。

確かに数が多すぎるのは考えもんだけど、誕生日を祝われて嫌な奴はそうそういないだろう。榛名も例外ではないから少し嬉しいのだ。こいつにしては可愛いところがあるのだと、そうやって自分に言い聞かせ、沸き上がる嫉妬という感情を抑える。

と、榛名が机にあるプレゼントだけを紙袋に詰め込み終わったところで担任がやってきた。放課後のHRである。プリント数枚を配られ、来週の連絡事項を少し話してすぐに解散となった。
榛名はそのまま自分のロッカーに行き、残りのプレゼントを紙袋に詰め込んでいる。あたしはこれ以上一緒にいても辛いだけなので、榛名にまたねと挨拶し、





開けっ放しの教室のドアを潜り抜けた。



開けっ放しの教室のドアを潜り抜け、ようとした。






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090524(+加筆修正0616)
今回は選択肢にしてみました。どちらも内容的には変わらないので、お好きな方をどうぞ。

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