八は、俺に笑うことを教えてくれた。
友と過ごす楽しさを教えてくれた。
四季の自然の美しさを教えてくれた。
そして──、恋を教えてくれた。

八は、俺にとって太陽だ。


何も無かった俺に、八はたくさんのことを教えてくれた。
八と出会っていなければ、俺は今でもきっと無感動に生きていただろう。

そんな八に、俺は何か一つでも返すことができるのだろうか───。





「また兵助は、そんな事で真面目に悩んでんのか?」
「そんな事とは何だ!俺は真剣に…「もうもらってるよ」
向きになって言い返そうとする兵助を、八左ヱ門が優しく制する。

「なんで…、だって俺には……」
「何も無い、ってか?」

八左ヱ門の言葉に、兵助はびくりと俯いていた顔を上げる。


「聞いてくれ、兵助。俺はもうお前からたくさんのものを貰ってるよ。兵助と一緒にいるだけで、世界がすごく綺麗に見えるんだ。それに、」



「どんな汚いことをして生き延びてでも、帰りたいと思える場所ができた。……お前のことだよ、兵助」

八左ヱ門がいとおしむような、けれど真剣な表情で此方を見つめてくる。



驚いた。八左ヱ門がここまで自分を想ってくれているとは思わなかった。
こんな事を言われてしまっては、俺は自惚れるしかないじゃないか…。

ああ、八はきっと何もかも分かっているんだ。俺が何を考えているのかも、…いつ死んでもいい、という思いを抱いていることも。



でも、八がそう言ってくれるのなら俺は何をしてでも生きてやろう。
八が俺の所に帰ってきてくれるというのなら、俺は「おかえり」を笑って言ってやる為に生き延びてやる。


太陽の様に周囲を明るく照らす八を、俺が支えてやれるというのなら。






なんだか自分でも何が書きたかったのか分からなくなってしまいました。生に執着の薄い久々知に生きる決意を固めさせる話が書きたかったのですが、上手く伝えられない…。
取り敢えず、竹谷はタケメンだと信じてます!


2011/5/15






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