「八」
「なんだ?」
「八左ヱ門」
「兵助?」
「竹谷」
「おーい、兵助さーん?」
「はちざ」
「………」
「はっちゃん」
「………………」


兵助は散々俺の名前を読んでみればそれきり、返事もせずに何やら考え込んでしまった。こうなった兵助は此方から話し掛けない限り、なかなか思考から戻ってこない。事情は分からないが、あんなに名前を呼ばれれば俺だって気になる。


「どうしたんだ、兵助?」

「いや、俺はいつも八って呼んでるけどさ、本当は八左ヱ門だよなと思って」

聞いてみれば何を今更、そんな事で考え込んでるのか。


「八左ヱ門は長いから、八って呼ぶことにしたんじゃなかったのか?」

「そうだけどさ、八の他にもいろいろ呼び方があるなあと思って」


だからあんなに俺の名前を言ってたのか。兵助は頭は良いのに、相変わらずどこかずれている。
俺の答えは初めから決まりきっているというのに。


「兵助に呼ばれるなら、呼び名は何だってうれしいに決まってる」
「……八はすぐ、そういう恥ずかしいこと言う」

いつものように笑って言えば、返ってきたのは予期せぬ言葉。
今のって別にそんな事言ってないよな?

「あ!今、八って言ったから別に今まで通りでいいんじゃないか?」
「うん、そうしとく」
「俺ははっちゃん呼びとかも大歓迎だけどな!何でもいいんだよ」
「じゃあ、また今度考えとく」
「次は程々にな…」



本当に兵助に名前を読んでもらえるなら八、でも八左ヱ門、でもはちざ、でもはっちゃん、でも何だってうれしい。出来れば名字は他人行儀な気がするから止めて欲しいけど。
あ、あともう一つ。



「生物委員、だけはやめてくれ……」




***

兵助に竹谷のことを何て呼ばせるか迷ってるのは私です。

普段は八呼び推奨ですが、はっちゃん呼びにもきゅんとします(^^*)そして、はちざも捨てがたい。
なので呼び名がころころ変わるかもしれません。こんな所で言い訳しときます。
アニメって確か、なかなか名前で読んでくれませんでしたよね?

2011/6/27