ペトラの探し物

「うーん、どこに行ったのかなぁ…」


頼まれた資料を取りに資料室に向かう途中、草叢にしゃがんで何かを探しているペトラさんを見つけた。
どうしたんだろうと首を傾げながら、私は急いで外に出る。

頼まれた資料は急ぎのものではないから、少し遅れても大丈夫だと思う。


「ペトラさん、どうしたんですか?」

「あ、シィナちゃん!少しね、探し物をしてて…」


困ったように笑いながら、ペトラさんはまた草叢に目をやる。
いつも優しくしてもらっているから、少しくらい何か役に立ちたくて、私は手伝いを申し出た。


「あの、私にもお手伝いさせてください!」

「え、いいの?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」


この後訓練が入ってるから、実は焦ってたの。
そう言って、ペトラさんは立ち上がって私に笑いかけた。


「それで、何を探しているんですか?」

「うん、手紙なんだ。窓際で読んでたから、風に持っていかれちゃって。このあたりに落ちたはずなんだけど」

「分かりました」


頷いて、私は少し離れたところを探し始める。
二人でそのまましばらく探していたけれど、手紙らしいものは一向に見つからなかった。


「…見つからないなぁ。シィナちゃん、そっちはどう?」

「見当たりません…」

「そっか…それなら仕方ないね」


手についた土を払いながら、ペトラさんが私の方へ歩いてくる。
もう訓練に行かなくちゃいけないんだろう。結局、私は役に立てなかった。


「すみません、お役に立てなくて…」

「全然そんなことないよ!シィナちゃんが手伝ってくれて、嬉しかった。ありがとう」

「ペトラさん…」


微笑んで、ペトラさんはそう言ってくれる。
顔を上げてお礼を言おうとしたとき、ペトラさんの背後の木に何か白いものが引っかかっているのに気付いた。

それを伝えると、ペトラさんは「あれだよ!」と歓声を上げる。


「あんなところにあったなんて。シィナちゃん、ありがとう!」

「い、いえ…!でも結構高いですね。何か取ってきますか?」

「ううん、このくらいなら大丈夫」


そう言って、ペトラさんは木に手と足をかけた。あっという間に登って行って、白い便箋を手に軽々と地面に着地する。

今更だけど、この人もれっきとした兵士だった。


「ああ、よかったぁ」

「それ、誰からの手紙なんですか?」

「家族からなの」


嬉しそうに笑うペトラさん。

家族、か。
私にはもう居ないものだ。

だから、純粋にいいなぁと思った。


「手紙って、いいですよね」

「そうだよね。…あ、じゃあ私、シィナちゃんに手紙書こうかな」

「え?私に…?」

「うん。シィナちゃんも私に手紙書いてくれる?それで、手紙を交換しようよ」

「は、はいっ!」

「じゃあ、今度便箋買いに行こうね」


そんな素敵な提案に自然と頬が緩む。

やっぱりペトラさんって優しい人だ。

訓練に行くペトラさんを見送って、私も資料室に向かった。
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