調査兵団と酒@

今日は無礼講だ。
訓練を終えた夕方に、エルヴィンさんに呼び止められて言われた言葉。わけがわからない私は当然、首を傾げた。

食堂に向かう途中で会ったハンジさんにそのことを言ったら、それはお楽しみだよ。と満面の笑みで返され、余計に訳が分からなくなる。そのままハンジさんに背中を押されて向かった食堂には、たくさんの料理と飲み物が並べられ、既にたくさんの人で賑わっていた。


「シィナ、もうすぐ訓練兵になっちゃうからね」


104期訓練兵団に入団することを許可された私は、もうすぐこの調査兵団本部を離れる。
にっこり笑ったハンジさんは、私の手を引いて食堂に入った。すぐに私のための送別会なんだと気付いて、嬉しくなる。

向かったテーブルにはエルヴィンさんとミケさん、それからリヴァイさんがいて、早くもお酒を飲んでいるようだ。


「来たか」


かたん、とグラスをテーブルに置いてリヴァイさんが私たちを見る。
エルヴィンさんが座るように促した。


「さあシィナ、さっきも言った通り今日は無礼講だ。好きに過ごしなさい」

「は、はい!」


2年前のウォール・マリア陥落で多くの土地を失ったことで深刻な食糧不足に陥っている中、そこに並べられたたくさんの料理達。
嬉しいけれど同時に気後れもしてしまって、私はなかなか手を付けられなかった。

そんな私に気付いたのか、リヴァイさんがお皿を一枚私に差し出す。


「変な気遣うんじゃねぇぞ。こいつらはお前の送別会と称して大騒ぎしたいだけだ」

「またまた〜!そういうリヴァイだっておんなじくせに〜」

「おいハンジ、てめぇもう酔ってんのか?」

「そんなわけないでしょお〜!」


へらへら笑うハンジさんの顔はいつも通りだ。リヴァイさんの拳ももろに受けて奇声を発している。
こう言ったら失礼かもしれないけど、確かにいつも通りだ。


「ほら、シィナも飲んでごらんよ!」


ずいっと出されたグラスの中の透明な液体。匂いは葡萄酒のそれだ。


「でも私未成年ですし…!」

「こらハンジ。シィナはまだ子供だぞ?」

「けちけちしなーい!それに、子供って言っても正確な年齢わかんないじゃん」


少しくらい大丈夫だって!と無理やり口元に押し付けられた葡萄酒を仕方なく一口飲むと、意外なことにとても口当たりがよくて飲みやすかった。


「おいしい…」

「…ほう、分かるのか。ならこれはどうだ?」

「ちょっと待て、リヴァイ。お前まで何を…!」

「あ、こっちもおいしいですね」

「シィナ…」


頭を抱えているエルヴィンさんには申し訳なかったけど、美味しいものは美味しい。

お酒好きらしいハンジさんとリヴァイさんがあれもこれもと種類の違うお酒を差し出してくる。
そこにミケさんまで加わって、私の周りはあっという間にお酒だらけになった。


種類は多くてもそれぞれの量が少なかったから、お酒をたくさん飲んでいるという感覚がまるでない。
私は自分でも気づかないうちに、いわゆる酔っぱらいになってしまった。

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