エレンは鈍感

104期訓練兵として訓練兵団で生活を始めてしばらく。
私たちは、ある重大な事実に気付いてしまった。


「エレン、ベルトがねじれている」

「エレン、ちゃんと食べないと力がつかない」

「エレン、あなたは私が守る」


全てミカサの言である。


最初のうちは母のように姉のようにエレンに接しているのだと見えていたけど、時とともに段々と、その認識が誤りだったのだと思い知ることになった。
最期の言葉に至っては、あれ、それ立場逆じゃない?と誰もが思ったことだろう。

何にせよ、彼女がエレンを特別な相手として想っているのは誰の目にも明らかだった。
それなのに、当の本人はというと。


「え、ミカサ?あいつは家族だよ」


想いの捉え方に大きなズレがあったようだ。


「もー!何なのあれ!鈍感にも程があるでしょ!?」


ミーナが枕を抱えて声を上げる。
昼間のエレンのその返事を思い出してしまったらしい。


「気付くでしょ、気付くよね普通!」


他に楽しみのない訓練生活で、もっぱらの話題となるのは色恋沙汰だ。

誰が誰を好きらしい。とか、誰が誰に告白した。とか、そんな情報をいち早く拾ってくるのは他でもないミーナだった。
情報収集が趣味らしい。
どんな趣味?と突っ込みたくなるけど、この話が面白いからまぁいいかと思ってしまう私も大概だ。

そんなミーナの次なる標的は、家族だと言い張るエレンとミカサの関係について。ミカサの方は言わずと知れているけれど、相方エレンは相当の曲者だった。


「好きなの?って聞いたら何て答えたと思う?」

「家族だから好き?」

「惜しい!家族だから考えたことなかったって!」

「うわぁ…」


ミカサが少し不憫になった。


「あんたら、いつまでそんな話続けるつもり?」

「あ、ごめんアニ!もう寝る?」

「当たり前でしょ。明日も早いんだから」

「うーん、でももう少し!」

「エレンが鈍感バカってだけの話でしょ。何がそんなに楽しんだか」

「アニ、ばっさり言ったね…!」


アニのオブラートに包まない言い方で、エレンは鈍感バカに決定してしまった。
流石アニ。不機嫌な彼女の辞書に、気遣いの文字はない。

寝たいと訴える彼女の機嫌をこれ以上損ねると後が怖いので、私たちは続きを諦めて布団にもぐった。

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