巨人を駆逐する。それが彼の口癖だ。
じゃあ、巨人を全て駆逐したらそのあとはどうするの?と聞いたら、壁の外に出て世界を冒険するのだと楽しそうに笑った。


「昔アルミンに見せてもらったんだけどさ、壁の外には俺たちの知らない色んなものがあるらしい」

「それってもしかして、禁書の内容?」

「ああ。アルミンのじいちゃんが持ってたんだ」


壁の外のことを記した本は、憲兵団によって禁書に指定されている。持っているだけでも罪に問われるものだ。

そんなものをもちろん持っているわけはないから、私はそれを目にしたことはない。

けれど、禁書の内容を次から次へ話してくれるエレンの瞳が輝いているから、想像もできない話なのに私まで楽しくなってきてしまう。


「すごいなぁ…。まだまだ私たちの知らないことってたくさんあるんだね」

「…ナマエ、いつか、絶対一緒に壁外に行こうぜ。それで、世界中を冒険するんだ」

「エレン…」


ぎゅっと私の手を握って、きらきらした瞳を向けてくれる。そうして、にかっと笑った。
私の大好きな笑顔だ。
それが見られただけで、何だかもう心が満足してしまう。


「誰も見たことがないようなものを一番に見て回るんだ。それができるのは、この世界で一番自由を手に入れたやつだろ?」

「うん、そうだね」

「だからさ、絶対一番の自由を手に入れてやろうぜ!」

「うん!」


笑いあって、手をつないで。それだけで十分に幸せだけど、世界中のありとあらゆるものをエレンと見て回れたらどんなに素敵だろう。
巨人に閉じ込められた今の人類にはとても難しい、夢物語のような話かもしれないのに、なぜかエレンならそれをしてしまえそうな気がするのは、きっと私だけじゃない。







寄り添う硝子が二つ
(あまりにも脆い僕らが、強く強く願う夢)








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