12

「あっはっはっはっはーっ!」
「あなたが”海賊狩りのゾロ”さんだとはつゆ知らず!」
「失礼しました!!」

わたし、魔女のアスティは、今後一生ゾロに楯突くことが無いことを誓います。
たった今この小舟の国の王座に君臨した緑の髪の王様に、そんな誓いを立てて口元をヒクつかせる。痛々しいコブやら傷やらボロボロになった歯を見せながら、不自然に明るく元気にえいさーえいさーと、オールを漕ぐ3人組に、なんだか自分までやられた気持ちになってしまい、ウッと目を逸らす。この道化のバギーの一味の海賊であるという男達が斬りかかって来た時のゾロと言えばもう鬼の如く強かった。結局彼は持っている刀のうちの一振りも抜刀することなく素手でタコ殴りにしてノックアウト。口が裂けても本人には言えないが、ゾロが一番怖かった。なんせ喧嘩というものを生まれて初めて見たのだから、こんな一方的なものだとは夢にも思うまい。
明後日の方向を向いて、空気を消そうとするアスティにが気に入らなかったのか、ゾロは彼女の顔ほどもある大きな片手で、頬をむにゅりと一掴みした。

「いひゃいいひゃい!」
「嘘つけビックリするくらいソフトタッチだわ!」
「ごめんなさい!!」
「いいえ!!!」

なんだこれは…海賊たちは、自分たちが何をみせられているのか心の底から不思議になる。

「そふぇより…ルフィ見ふひふぁっちゃっふぁね。だいふぉーふかふぁ?」
「そのまま話すな…」

ゾロはやっとアスティの頬から手を離すと、ため息をつきながらゴン!という音(ゾロのお尻は鉄でできてる説浮上)を立てて座った。

「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。とにかく、ひだりに漕げ」
「ひだり?ルフィまっすぐ行ったけど」
「…まっすぐ漕げ。あいつのことだ、陸でもみえりゃ自力で下りるだろ」

海賊たちは人の良さそうな笑みをはりつけて、元気よくサーイエッサー!とオールを振るった。

「で?何で海賊が海の真ん中で溺れてたんだ」

ゾロが心底不思議であると言った顔で海賊達に質問を投げかけるが、これまでの経緯をしっているロッソはお前も対して変わらなかったろうに…とジト目を向ける。アスティもゾロと同じく不思議だったのか、ロッソのそんな瞳には気づいていない。
海賊たちはというと、待ってましたとばかりにある女が自分たちを騙したのだと口々に叫び始めた。

彼らによると、自分たちが襲った商船を女に騙されて奪われたあげく、彼女が予測した気候、激しい雨とスコールの予感が的中したため小舟が大破。その間に女は颯爽と姿を消し、残されたこの男達は途方に暮れていたのだという。
すべてを黙って聞いていたゾロはその女の見事なやり口に関心の声をあげ、航海士なってくれないかと平然と言ってのけた。アスティはあっぱれと小さく手を叩いてしまっている。

「あいつは絶対探し出してブッ殺す!!」
「それより宝をまずどうする」
「そうだぜ、このまま帰っちゃバギー船長に…!」

「バギー船長…?」
「?アスティ知ってるか?」
「ううん、なんだか海賊の船長さんみたいだなって…」
「「「「…」」」」
「えっ?」
「お前頭ん中花畑か…」
「えっ???」

ロッソはあちゃーと頭を振った。

「お嬢さん…おれ達は本物の海賊ですよ…、バギー船長ってのはおれ達の頭…!あんた達、”道化のバギーを知らねェんで?」
「あっ、そっか…」
「…まあいいか...。それで、頭は”悪魔の実シリーズ”のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ…!」
「悪魔の実を?」
「ゾロ、あくまのみって」
「もう黙っていなさい」
「はい」

なにもそんな、突き放さなくたっていいじゃ無いか。アスティはしょぼくれてロッソのあごの下を撫でた。ゾロのバカ。

「あとで説明するから待ってろ」

やった。ゾロ大好き。
かくしてアスティの今日のやることリストに新しい箒を手に入れることが追加され、しばらくは麦わらの一味と行動を共にすることになったのである。
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