08
おばあちゃん行ってきます!そう元気に飛び立った孫娘の細っこい後ろ姿をしばらく眺めた。空は快晴。雲ひとつない。
もう随分遠くから、まだ行ってきまーーすと叫ぶ声が聞こえてくすりと笑いが込み上げてきた。あの子ったら、もう。ふふ。
見えていないだろうけど、小さく右手を振って応える。
ほらほら、そんなに勢いよく飛ぶとつんのめるわよ。
お水は大事に飲みなさい。
ロッソ、アスティをよろしくね。
お昼ご飯ちゃんと食べるのよ。
おやつにクッキーも入れておいたから。
はぐれちゃだめよ。
こら、足は閉じる。
しっかり前向いて。
ずっとこっち見てたらカモメとぶつかるじゃない。
お金は無駄遣いしちゃダメ。
お土産はいらないからね。
お友達つくるのよ。
おばあちゃんのことは気にしないでいいの。
色んなものを見てきて、感じてきてね。
たくさん笑ってね。
たくさん泣いてね。
たくさんたくさん、経験してね。
危ないことはして欲しくないわ。
心配よ。
でもあなた冒険が好きだから。
無茶しないでね。
大好き。
愛してるわ。
「行ってらっしゃい。アスティ」
色んな気持ちを一言にして、紡いだのだ。