このようにしてプロポーズされたわたしであるが後にあの日は私たちの記念日だったことを知る。どうも自分はそういうことにこだわらない性なのだが、彼は違うらしくそう言えば毎年何かしら言っていた気がしないでもなかった。そう正直に話せば呆れたとため息を吐かれたうえに記念日について延々語られた。奴も存外女々しいところがあったものだ。まあプロポーズされた日をしっかりインプットした私も大概であるのだが。

さて、あの日買ったゼクシィによれば結婚プランは8ヶ月前から練るものらしく翌月から準備を始めることにした。御幸一也といえば、高校生活を野球に捧げ、その有り余る野球センスによりプロ契約。ドラフト1位で某野球球団に入団。いまは若手でありながら試合に出場したりして多忙な毎日を送っている。先に高校生活を野球に捧げたと話したが、彼とは高校からの付き合いなので今の野球漬けの生活も何だか慣れたもんであった。私自身、野球は大好きだし。いつだったか全く構ってやれなくて申し訳ないと涙ながらに話していたが、私は彼の楽しそうにプレイする姿が好きなのでむしろ家でゴロゴロされるよりバッティング練習の一つや二つしていてもらったほうがありがたいのだ。それに、全くというほど2人の時間が無かったわけではない。そりゃ、ほかのカップルよりは一緒にいた時間は少なかったが私たちはそれ以上にお互いのことを理解して信頼していたのだから、何も心配することはない。それを話せば一層泣き出すので慌てたものだ。何であのとき泣いたんだろう。彼女が思いのほか男前だから?愛を再確認したから?恐らく両者五分五分である。少し話がそれたが、とにかく彼は忙しいのである。それでも婚約したことを公表すれば適度な休みを頂けたらしく、結婚準備に専念することができた。

▼挙式8〜6ヶ月前までに両親に挨拶

幸い、私たちの両親どちらとも東京に在住している。北海道と沖縄だったら大変だったよね、と彼の運転で御幸家に向かう途中話しかけてみる。不意打ちだったのか、盛大に吹き出した。きったない、つば飛んだし。ちょうど赤信号になった。一也がこっちを向いて袖でふいてくれた。相変わらず力がつよい。

「ねえ」
「ん?」
「ママパパ元気?」
「うるさいくらいにメールで君のこと聞いてきますよ」
「うん、わたしにもLINEとんでくる」
「おいおい、なら俺に聞く必要ねえって…」

あ。青になった。
彼はトレードマークのメガネを押し上げハンドルをにぎった。あれ、御幸家ってこんな長かったっけ。ズルズルと浅く座って窓の外をみた。それから一也に視線を移す。心なしか表情がかたい。いや、私の親に挨拶しに行くときなんかこんなもんじゃなかった。ガッチガチもガッチガチ。運転も危なっかしくて私が運転したものだ。うちの親とも面識あるはずなになあ。そうつぶやけば、大事な娘さん貰うって報告しに行くんだぞ、緊張しないわけないでしょーがといつになく真面目にいうもんだからデコピンしておいた。そしたら怒られた。それで少しでも緊張がほぐれればなと思ったんだよって言えば、ただしたかっただけだろーと不貞腐れてた。あったり〜。なんつて。

「んま、おまえもそんな緊張せんでいいぞ」
「この間ガッチガチに緊張してた人が何を言うか」
「なんのことやら〜」

トクントクンと何だかいつもより早めに聞こえる鼓動が今はすごく心地よかった。
こいつ、私がちょぴっとほんのちょぴーーーっとだけ緊張してるの見破りやがった。嬉しかないからな。


痛めるときも、




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