使い古された二段ベッド。

柱には俺たちの名前と年齢、それから小さな切り込みも入っている。オレンジのペンが愛で、青のペンが俺。初めは愛の方が高かった身長も、今では逆転している。
ベッドは下の階が俺のテリトリーだ。思春期にもなって二段ベッドか、とげんなりしたりするときもあるけど、案外片割れとの賑やかな共同生活も嫌じゃない。生まれた時から一緒だからだろうか。

ここにあの姉も加わっていたらどうなっていたことかと身震いすることもある。

「…」

いつも通り自分の布団で寝ていたが、背中にモゾモゾと違和感を感じてぼんやりと目がさめた。暖かくて柔らかくて小さいそれは少し身じろぎした後、俺の背中にピットリとくっついて動きを止めた。
またか、と小さく溜息を吐いた。

「…ごめん」
「…いーよ別に。慣れてるし」
「スンマセン…」
「お前なあ、こーなるくらいなら観んなよ」
「…ぐうの音もでません…」

どーせションボリした顔をしているのだろう。想像に容易い。

愛は俺に似ていない。唯一似ているところと言えば、やると決めたことは最後まできっちりやり切る。全力を尽くして挑むところだろう。精神面の話以外であれば、首元のおんなじ位置にホクロがあることだろうか。他はまっったくと言っていいほど似ていない。ビジュアルは特に。

愛の顔は全体的に丸っこくて小さくて(瞳以外)優しげだけど、俺は全てにおいて鋭い。女子に流れることもあるくらい鋭い。対照的だと言えるだろう。

「…ほれ」
「!」
「さっさと寝るぞ」
「うわぁぁん優しいごめんねえ…」
「いーから早よ寝ろ」

あと似ていないことと言えば、ホラー番組に食いつくか食いつかないかである。俺は別に楽しけりゃ怖いのでも怖くないのでも観るが、愛は苦手なのにもかかわらず怖いもの見たさで冒険するタイプだ。今日はグラスに水を入れて、そのグラス越しにテレビを観ていた。そんな風にみて楽しいのか聞いたところ、楽しいとかじゃなくてアドベンチャーだよね…ジャーニーだよね…!と息を荒くしていた。引く。

ゴロリと寝返りをうって愛と正面から向き合う。そして腕を広げて近くに寄れるようにスペースを作ってやれば、嬉しそうな安心したような顔をしてぎゅ、と腕を回してくる。いい歳した兄妹が何をしてんだか、とずいぶん小さくなってしまった自分の片割れの髪を片手でするりと撫でながらもう片方の手で背中をトントンとリズミカルにたたく。これをすれば愛はすぐに寝る。

夜になって怖くなって俺の布団に忍び込む。心霊番組が放送される日は決まってこうだった。

まったく手間のかかる奴め。

「これが彼女だったらなあ…」
「あんだって??」
「ナンデモナイッス」
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