落ち着かない。



とっても落ち着かない。



家に知らない女の子が居て、しかも父さん母さん、真利姉ちゃんととっても、そりゃもうとーーっても親しげでミナコ先生と一緒に迎えにくるし、むしろ最初1人で僕のこと待ってるし、お客のおじ様おば様たちにも可愛がられてるし。この子こんな浸透してたっけ…?ってなもんである。看板娘とはまさにこの事を言うんだなぁ〜…。

「ぇ何!?今のジャンプ!え、もういっかい!」

昨日なんとなく居心地が悪くてアイスキャッスルに行って一滑りしてしてきたのもつかの間。ニュースであのロシアンヤンキーがなんかすごいことしてる。

「普通のジャンプと何がちゃうん?」

うわびっくりした。いつの間にか僕の隣でお盆を抱えてチョコンと隣に座り、不思議そうにテレビを見つめる従妹の姿に肩を揺らす。もう一度テレビに映ったロシアンヤンキーを見ておお〜なんて言っているこの子が従妹だと知ったのもつい昨日のことなのに、そう言えば5年前に「ウチに女の子がやってくる」的な話してたような気がしないでもないなと思い返したのも昨日のことである。

昨日は本当にビックリした。改札出たら直ぐに女の子が僕の腕をめいっぱい掴むもんだから何事かと思った。大きなタレ目がちの瞳を向けられて鈴の転がるような声で、勇利くん?と聞かれてしまえば縦に大きく首を振るしかなかった。こんな子知り合いにいたっけ…?なんて思ってると女の子はよかった!ほんまに勇利くんやった!と手を合わせた。ていうか関西弁?

次に女の子が口を開こうとしたところでミナコ先生の大きな声が僕の名前を呼ぶもんだからもう注目の的。ろくに挨拶回りにも行かず家へ直帰した次第である。

「はづきちゃーん、こっちにビール!一番搾!」
「あ、はーいただいまー!」

はづきちゃんはとっても素直で明るく、働き者のようで、両親も姉もお客さんたちもみんな気に入っているようだ。彼女は僕にまた後でたくさんお話し聞かせてやと言うとささっと離れて行ってしまった。グラスと一番搾りを取りに行ったのだろう。

気まずくないのだろうか。同年代の異性、といっても僕はここの息子だしはづきちゃんとも従兄妹な訳なのだから赤の他人ではないけれども、それでも同じ屋根の下でこれから暮らすって言うのにあのフレンドリー精神。もう脱帽だ。彼女が嫌そうな顔をしたのを帰って来てから一回も見たことがない。むしろニコニコとこちらを不快にさせることのない方法で距離をしっかりと詰めることのできる人間だ。言うこと無しかよ…。

そうそう、彼女は出身が三重なこともあって未だに方言が抜けてない。なんか新鮮だ。三重弁って愛嬌があって可愛い。

お客さんにビールをわたしてニッコリ笑う姿を横目で眺める。笑うとえくぼができるらしい。それをお客さんに指摘された様で、恥ずかしそうに笑ってほっぺたをつまんでいる。




……あ、彼女が使うから可愛いのか。

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