居間に置かれたソファに横たわりながら部屋に響く時計の秒針と同じリズムで、かちりかちりと千本を噛んだ。
一定のリズムで刻まれる音が耳障りになってきて噛むのを止めたが、時計の針は刻々と進むことを止めなかった。
そろそろ一息ついてもいいんじゃねぇかと、慣れない台所に立って冷蔵庫の牛乳を手に取った。
かちっと乾いた音の後、赤と青の炎が鍋底から牛乳をふつふつと温めていく。俺がしてやれることってちっせーな、と小言が漏れた。
" 瓶が可愛くて思わず買っちゃっいました!"とはしゃいでいたあいつの顔を思い出しながら、その蜂蜜をスプーンで一掬いして、目の前に並べられたマグカップの片方にだけ掻き混ぜた。
白い湯気と共に薫る蜂蜜と牛乳の甘い匂いを吸い込んで、あいつの部屋へと向かった。
「入るぞー」
机にも床にも散りばめられた紙やら本やらノートやら。ぐちゃぐちゃという擬態語が似合いそうなその真ん中には、あちらこちらに視線を移動させ時折眉間に皺を寄せたり小さなため息を吐いたりと忙しそうなあいつの姿。
「...!わわ、ゲンマさん!」
ようやく気付いたそいつが、心底驚いた表情をするもんだから、つい笑っちまった。
「休憩とれよ、ほらこれ」
ほくほくと湯気を立たせている右手のマグカップを渡せば、尻尾でも振ってるんじゃないかと思わせる程嬉しそうな表情を浮かべた。
自分のマグカップを狭い机の隙間にねじ込み、そいつの後ろに回り込むとふわふわの髪の毛が俺の頬を擽った。
「どど、どうしたんですか?」
「俺も、充電」
両手に抱えたマグカップのせいで身動きが取れないこいつが、ぐるんと顔だけこちらに向けた。
「反則、ですよ、こんなの...」
「−っ!」
小さく呟くその口元に吸い込まれた。体温以上に温かさを持つそこは、蜂蜜だけではない甘さで溢れていた。もっと、と俺の要求に戸惑いつつも応える反応が可愛いと言わず何と言う。思わず抱き締める腕に力が加わってしまう。
「とっとと終わらせてくれよ」
「、はいっ」
今度は頬に小さくキスを落として、意地の悪い俺がひょっこり顔を出した。
「続きは、その後な」
飲み終えたマグカップを二つ手に取って、居間へと足を運んだ。ソファに横になり再び時計の秒針の音をBGMにあいつのことを気長に待つか。
Title by かりそめの恋:カメ子様
& Dedicate to カメ子様
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