気の合う友人なら、あいつ以外にも多いとは言えないが存在する。雷蔵は俺の気持ちをよく理解してくれるから安心するし、八左ヱ門は同じ委員長代理ということもあってよく相談とか乗ってくれるし、勘右衛門は言わずとも気心しれた同じクラスの友人だ。それに比べて、あいつはどうだ?いつだってフラフラへらへらしてて、人の顔勝手に使って悪戯して迷惑ばっかかけられて。その癖忍びとしての才能は抜きんでてやがる。真面目にやってんのかはたまた不真面目なのか分かりゃしない。正直見ていて苛々する時だって少なくない。 それなのに、なんでかな。 「お前が隣にいると、酷く落ち着くんだ」 そうやって言えば三郎はきょとんと目を丸くする。こんな表情を見せるこいつは珍しい。 「なんだ兵助、藪から棒に」 「うーん、俺の中でお前の存在がいまいちよく分からなくて」 「ほう」 「どちらかと言えば、三郎は俺の嫌いな人種だ」 「…そこはハッキリ言うんだな」 三郎が苦笑いを零したから、とりあえず頷いた。だって嘘ではない。三郎は忍びに向いた性格をしている。だから苦手ではないが、嫌いなのだ。苦手なのは忍びに向いてない人間。しかし嫌いなのは忍びに適した人間。三郎や、自分のように。ああ、そうか。 「俺と三郎は似てるから、嫌いだけど、落ち着くんだろうな」 きっと考えが似てるから、同族嫌悪してしまう一方、すべてを赦してしまうのだ。自分とはまるで違う性格、それでも根本の性質が自分とよく似ているから、まるで自分のことのようにあいつの行動に納得してしまう。 そんなことを考えていたら不意に含み笑いのようなものが聞こえ、三郎を向けば雷蔵特有の優しい目元を細めてこちらを見ていた。 「一理ある」 三郎は言う。 「私も兵助の傍はとても落ち着く」 「…うん」 「だが兵助と理由は同じであり反対だ」 「うん?」 口元の笑みを深め、三郎はピ、と俺に指を差す。 「確かに兵助は私と似ている。だから兵助は私のような人間を嫌う。だが、私は私のような人間が好きだ」 それは、つまり。 「俺が好きってこと?」 「ハハ!ああ、やっぱり兵助は面白い」 「お前が自分で言ったんだろ、俺の間違いみたいに、自意識過剰みたいにするな」 「いいや、間違ってないさ、私はお前の隣にあることがとても心地良い」 噛み合ってないようで噛み合う会話。こんなものすら不思議と気持ちよく感じる。 「うん、俺も。三郎が隣にいると息がしやすいんだ」 「…仕方のない奴め」 「お前もな」 そう言いながら右隣に座るそいつに体重をかけて凭れかかった。喉を鳴らして笑う三郎の声が耳に心地良くて、そっと目を閉じる。隣に感じる体温がとても温かいものに思えた。 ちかくてとおい |