おバカを治す薬
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「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああ!?」
チュンチュンと可愛らしく小鳥が鳴き声を流す穏やかな朝。
悲痛な声が歌舞伎町に響き渡った。




「何事アルか!?」
血相を変えて、髪の毛がボサボサのまま、神楽は大好きな家主の悲鳴を聞きつけ押入れから飛び出した。
ノックもせずにぱーん!と思いっきり襖を開け放つ。
「かぐらぁ…」
情けない声を出した家主は、くすんと小さく鼻をすすった。
呆然とする神楽を、座り込んだまま見つめるのは、ふたまわりほど体の小さくなり、その胸に僅かな膨らみを持った銀時。

女になっていた。




「…で、朝おきたら女になっていたんですか」
銀時がようやっと立ち直り、普段の着流しに着替えてまもなく、新八がやってきた。
呆れたように目を細めているが、どこか遠くを見つめている気がする。
「そゆこと」
ふわあ、と可愛らしくあくびをしたあと、クシクシと猫のように目をかいた。
ぱたぱたと胸元を服で仰いで、ふと視線に気づく。
「…新八くーん?」
その声にハッとしたかのように新八の頭が揺れる。
そして再び、じっと何かを見つめ始めた。
その視線をたどった先には己の小さくも僅かな膨らみがある胸。
ぶちりと切れた銀時は、むんずっと新八の前髪をひっつかんだ。
「さっきから一体どこ見つめてるんですか、このエロ駄目メガネがああああああ」
怒声とともに、新八にタックルをかます。
しかし、銀時が思ったほど新八がふっとばず、ぱちくりと目を瞬かせた。
そして気づく。
「あー…そっか」
銀時は己の小さく弱くなった手を見つめて寂しそうにつぶやいた。
「銀ちゃん?」
神楽がその様子に不安そうに銀時の顔を覗き込んだ瞬間。

ぴんぽーん

来訪を告げるチャイムが鳴り響いた。
「新八ィ、出てくるヨロシ。銀ちゃんを泣かせた罰ネ」
銀時のやわらかな髪の毛を優しくなでる神楽は新八に冷ややかな視線を投げる。
「えええええええ、僕がいつ泣かせたんですか!?」
その様子に慌ててふためきつつも、どこかしら罪悪感を感じた新八は仕方なく腰を上げた。
「おせぇよ」
しかし、聞きなれぬ声を聞いてあげた腰をそのままとめてしまう。
「一体いつまで待たせるのだ、何度鳴らしたと思っている?」
銀時がゆるゆると顔を上げた。
「金時、ひさしぶりじゃのー!」
ぴきりと神楽のこめかみに青筋が浮かぶ。
「何しに来たんだよてめぇら…」
心底呆れた様子の銀時は、顔を上げ己の体を隠しながら、かつて共に同じ戦場で血を浴び、肉を切り裂いた仲間とも呼べる三人の名を呼んだ。

「金じゃねー銀だっつてんだろが、バカ辰馬。ヅラ、何勝手に人ん家にあがりこんでんの?いや、ヅラだけじゃなくお前ら三人、なにやってんの?特に、晋助。オメーいま京都にいるんじゃなかったのかよ」





     

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