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始まりは、真っ白だった。
あたりどこを見渡しても、かけらすら落ちていない。
自分の記憶。
あれ?どこに行ったの?お父さん、お母さんは?自分は誰?
なんてセリフはあの時吐き飽きた。
拾われた先のお城で、守りたいものができたから、もう言わなくていいと思った、わけじゃない。
ただ、自分の存在理由が、ここにいても良いという意味ができただけだった。
あの日までは―。

「ドルマゲス!!」
気持ち悪いほど、ニヤニヤした道化師は、素晴らしいデザインを持つ杖をその手に握っていた。
目を見れば、完全に正気がなくなっているように、深い闇が光っている。
エイトは担いでいる剣をさやから引き抜いた。
ここにいる、ミーティア姫と、トロデ王を守らなければならない。
「ふははははは!ついに!ついに手に入れた!この杖を!」
高笑いをする、道化師。
「姫様、おさがりください」
じりっと、力を込めて床を踏みしめ、飛びかかる瞬間を狙うエイトの後ろで、恐怖にその身を震わせるミーティアは、今にも泣き出しそうな顔だ。
なぜなら、ここにいる3人以外の人間全てが、城ごと茨で覆われてしまい、その息を止めていた。
「お父様!こちらへっ」
道化師が杖を振りかざした。
狙いは、トロデ王へと向けられている。
ミーティアがそれに気づき、悲痛な叫び声で父を呼んだ。
エイトがすかさず、トロデ王の前に出る。
瞬間。
3人を眩しいほどの光がおおった。
「くっ…!」
くるりと回る視界。
守らなければと思う刹那、エイトは気を失ってその場へ倒れこんだ。
「お父様!!!」
叫ぶミーティア。
今まさに、朝日が登ろうとしている。



「おい、聞いたかよ。トロデーン城がいばらに覆われたっていう噂」
「ああ、聞いたよ。なんでも魔物の住処に成り果てているだとか…」
噂を小耳に挟みながら、エイトは道を歩いていた。
傍らに、美しい馬と、古びた馬車を率いて街を目指す。






     

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