Episode-02:忘れ物03
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「古泉…」

ほっとして僕はその場に膝をついた。
よかった、彼は覚えていた。もうそれだけでよかった。
気まぐれな神様は、僕の願いを叶えてくれた。
涙が止まらない。
キョンくんが慌てたように口を開く。
が何を言っていいのかわからないのか、言葉は紡がれてこない。
「古泉…?どこか痛いのか?」
自分がひどい状況になっているのに、僕の心配をする彼。
ぎゅっと、手を握ってぬくもりを実感する。

「古泉ー」

不意に呼ばれ顔を上げた。
涙でぐちゃぐちゃになっていたのか、彼は「なんて顔してんだ」と軽く笑い僕の目尻に触れ涙を拭う。
「…腹減った」
「お腹…ですか?」
点滴はついている、それでもお腹がすいたという彼を僕は不思議に見つめた。

「ああ、んー…そうだな…まずは、ハンバーグかなぁ」
ふふっと笑う彼。
そうしてわかった。
食べ物を欲しているのだと。
「食べれるんですか!?」
「いや、わからんが…以前と違って空腹感がある」
これはいい傾向だ。
僕はナースコールをおした。
「お医者さんに聞いてみましょう。胃にずっと物を入れていなかったのでいきなりハンバーグはきついかもしれませんしね」
優しい笑を浮かべて、彼の頭を撫でた。
キョンくんは珍しく素直に頷き、医師が来るのを扉を見つめながら待てくれた。



 

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