Episode-02:忘れ物
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深夜、急に僕の携帯に電話がかかってきた。
これは、閉鎖空間発生を知らせるものではなく、病院からの緊急の呼び出しであった。
「…っ!」
悪い予感ばかりが頭をよぎる。
そんなはずはないと、機関の車を使って、病院までやってきた。
三階の一番奥ばったとこにある、病室。
そこが彼のいまの居場所。
急いで飛び込んで、僕は絶句した。

「キョン…くん…」

真っ青な顔。
隣には数人の医師。
彼の上にまたがった看護士が、心肺蘇生をしている。
神様はやっぱり、僕の願いを聞き入れてはくれなかったようだ。
「キョンくん!キョンくん!」

ひたすら彼のかわいいあだ名を呼ぶことしかできない。
電気ショックが三回行われ、心肺蘇生も三回ほど行われた。
それでも彼の心臓の動きを表示するモニターの緑の線はまっすぐなまま。
彼の白くなっていく肌に比例するかのように、僕の肌も冷え切っていった。

もう何度目かの電気ショックの後。
ピーとなっていた電子音が ピピッと音を変えた。
金縛りにあたように動かなかった身体が無意識のうちに、モニターを見る。
波が、できていた。

「先生!脈、もどりました!」
安どのため息が漏れる医師のそばで、情けなくぼろぼろと涙を流す僕。
さぞかし不細工だろう。彼に笑われてしまう。
少しだけ、土色だった顔色が暖かそうなピンク色に戻ってきて、しかし、目に浮かんだ涙のせいで、彼の顔は見えなかった。
医師の一人に連れられ、処置を受ける彼のいる部屋とは別の部屋に通される。
僕は、ずっと泣き続けていた。


 

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